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2011-09-25 00:00
野田首相の「東アジア共同体」否定論は日本の国益に反する
池辺 晃
調査員
野田佳彦首相は、今月発売された月刊誌『VOICE』に寄稿した論文「わが政治哲学」の中で、「日米同盟の堅持」を強調するとともに、「来年は多くの国々で指導者が代わる年で、権力の交代時期にはとかく波風が立ちやすい。いまこの時期に東アジア共同体などといった大ビジョンを打ちだす必要はない」と述べた。野田首相が、日本外交の主軸として日米同盟の重要性を強調することは、尖閣諸島、北方領土を巡る中国、ロシアの横暴な行為をみれば当然のことであるが、しかしだからといって、「東アジア共同体」のビジョンまで否定する必要はないと考える。本稿では、以下の2点の理由から、「東アジア共同体構想」否定論に対して反論を試みたい。
一つ目は、「東アジア共同体構想」が、すでに1997年のASEAN+3首脳会議の定例化からはじまり、今日までこの地域の様々な国家レベルの合意とともに着実に前進しており、今更日本がそれを否定するような意向を表明することは、不得策だと思うからである。東アジア統合の動きは、政治的にはASEAN+3、EAS、ARF、など、多様で重層的な枠組みを構築し、経済的にはAFTAを発効させ、CEPEA、EAFTAなどの議論も進められている。国内では、あたかも「東アジア共同体構想」は鳩山首相が急に提唱したかのように扱われているが、それは全くの間違いである。この構想は、東アジア諸国間で10年以上も積み重ねられてきた議論の産物である。また、その中には、日本のイニシアチブで進められてきたものも多い。
二つ目は、上記のとおりアジアの統合が動き出している以上、日本の関与が薄まれば、そのイニシアチブを中国などに取られ、日本が望まない形や方向性で統合が進められる可能性があるからである。中国は日本と政治体制が異なるだけでなく、その推進する経済的統合においても、日本が提案するCEPEAでなく、EAFTAを強調するなど、多くの点で違いがある。中国主導の統合が進めば、それはこの地域における日本の国益を損ねることになろう。
以上の理由から、野田首相が「東アジア共同体構想」のビジョンを否定することは賢明でないと考える。むしろ日本は、同構想を利用して、この地域に民主主義など、日本の国益に合致した考え方や制度が確立されるよう、日本が望む「東アジア共同体」のあるべき姿を打ち出してゆくべきであると考える。
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