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2011-09-20 00:00
オバマ外交のスタイルは「後方から指導する」?
高畑 昭男
ジャーナリスト
リビアのカダフィ政権崩壊を見守るアメリカで、「後方から指導する」(Leading from behind)という聞き慣れない外交スタイルが、話題を呼んでいるそうだ。「後方から指導する」とは、リビア問題が迷走していた今年4月、米国のリベラル系オピニオン誌『ニューヨーカー』で紹介された。オバマ大統領の補佐官の一人が同誌記者から対リビア政策を問われ、「後方から指導するのが、オバマ氏の対応だ」と説明した。これを好意的に分析し、いわば「オバマ・ドクトリン」の芽ばえであるかのように紹介したのが発端だ。ところが、この新外交スタイルについては「(1)中国などライバル国家の台頭で、米国の力が相対的に衰えた。(2)米国は世界各地で非難を浴びているから、表に立たない」などの後ろ向きの認識が強いとされて、保守派などから厳しい批判が寄せられた。
ブッシュ前政権で国防次官を務めたダグラス・ファイス氏は「嫌われるのがイヤだから表に立たないなどなどというのでは、リーダーとはいえない。第二次大戦後、一貫して国際秩序を築いてきた米国の指導力を放棄するものだ」と指摘した。コラムニストのチャールズ・クラウトハマー氏は「反米思想は冷戦時代からある。正しい行動を続けるなら、それを恐れてはならない」と批判し、論争は、保守・リベラル両派の間で広がっているという。論争の背景には、就任4年目のオバマ氏が多くの歴代大統領とは異なり、いまだに独自の「外交ドクトリン」を示していない事情もある。オバマ氏自身も「複雑な世界に一律不変の政策をあてはめようとすれば、トラブルに陥るだけだ」と語っている。外交ドクトリンといったものを嫌い、「臨機応変」の現実対応を主眼にしてきたともいえる。
その反面、2009年のイラン大統領選では「選挙無効」を叫んだ反体制派への対応が遅れ、昨年末以降の一連の「アラブの春」政変でも、初期対応の迷走を米メディアから批判されたのは否めない。外交原則を明示しない分だけ、リベラル、保守両派の不満の板ばさみになりやすい側面も否定できないようだ。もっとも、「後方から指導する」というスタイルは、オバマ氏が創造したものではない。これを国際社会に紹介したのは、政治犯として艱難辛苦を経て南アフリカ大統領となったネルソン・マンデラ氏だという。同氏は「指導者とは羊飼いのようなものだ。機転が利く羊を先頭に立たせ、その後を群れ全体が追うように仕向けるのがよい」と語っているそうだ。
確かに、リビア政変で米国は前面に立たず、英、仏などに主導権を持たせる姿勢を貫いた。軍事作戦では北大西洋条約機構(NATO)や国連との協調を重視する一方、裏では正確な空爆に欠かせない衛星情報などを提供してきた。だが、英貴族の伝統である「ノブレス・オブリージュ」(高貴な者の使命)のように、「指導者たる者、先頭に立って矢玉を浴びてこそ、尊敬される」という考え方もある。後方に身を置いて統率を狙うオバマ外交が、米国人の感性にどうあてはまるかは、今後の論争次第といっていいだろう。それでも、日本から見ればこの論争にはうらやましい面もある。過去2年間というもの、民主党政権の日本外交は、戦略も、ドクトリンも、何もないまま迷走し、日米同盟の空洞化など多大な損失を重ねてきた。民主党代表選で野田佳彦氏が3人目の首相に選ばれたが、まずはそうした反省に立って政治に取り組んでもらいたいものだ。
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