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2011-09-12 00:00
米国政治の麻痺によるアジアへの影響
岡崎研究所
シンクタンク
米ブルッキングス研究所のウェブサイト8月16日付で、同研究所のジョン・ソーントン中国研究センター所長Kenneth G. Lieberthal が「米国政治の麻痺は、アジアにおける米国の威信を落としており、それは中国内のタカ派とハト派のバランスにも影響を与えるかもしれない」と言っています。
すなわち「米国の強みは、間違いを犯さないことではなく、間違いからすぐ立ち直って、前より強くなることにあるが、現在、アジアの戦略家達は、米国は立ち直れないのではないかと疑っている、今回の債務上限引き上げをめぐる米国政治の麻痺は、米国の政治制度の財政問題を解決する能力について疑念を持たせている。また、今回の危機は、いずれ米国の防衛費の削減を招くということで、アジアにおけるアメリカのクレディビリティーを傷つけており、米国がこのまま長期的に衰退すると思われれば、アジアは中国の方に傾いていくことになる、一方、中国内のナショナリストは、中国はこの機会を逸せず自己主張すべきだと考えている。現状では、中国のトップはそれに反対のようだが、そのバランスは崩れるかもしれない」と警告しています。
たしかに今回の経済危機は、共和・民主両党の党派的主張が強いという米国政治の欠陥のために、妥協が難しくなり、見通しが困難となりました。また、それが国防費にはね返ることも、オバマの軍事問題への理解不足も重なって、不可避の状況です。しかし、過去の歴史から見て、米国がこのまま直線的に凋落することは考えにくいでしょう。現に、来年の大統領選以降、米国の政治がどの方向に動くかは、誰も予断できないことです。また、クリントン国務長官も、パネッタ国防長官も、軍事費の削減にはそろって憂慮を表明しています。
ただ、「米国凋落の印象が、来年の党大会を控えて、中国内のタカ派とハト派の権力闘争に影響を与える」というリーバソールの指摘は鋭いと言えます。中国は、昨年1年の強硬姿勢とそれがもたらした外交関係悪化を反省して、穏健姿勢に転じるという見通しが、今年の初めから噂されていましたが、その後もその強硬姿勢は変わっていません。おそらくは党大会を控えて、タカ派が一度得た優位を失うつもりはない、ということではないかと推察されます。そうした中国の内政が機微な時期に、米国に財政経済危機が訪れ、米国が弱みをさらけ出している、というタイミングはたしかに憂慮すべきことだと言えます。
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