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2011-09-08 00:00
野田は名実ともに「事務次官会議」を復活させよ
杉浦 正章
政治評論家
野田政権がマニフェスト1丁目1番地の「政治主導」で欺瞞の対応を見せている。首相・野田佳彦は、鳩山政権で廃止した事務次官会議を事実上復活させようとしているが、マニフェスト違反の指摘を恐れてか、「連絡会議」などというあいまいな呼称でお茶を濁そうとしているのだ。野田は、やはりマニフェストの「政策決定の内閣への一元化」で弱体化した政調会長の権限を強化したが、これは政党の決定だから方針変更は自由だろう。しかし、政府機関の場合、統治機構における位置づけがあいまいのままでは、責任体制が確立できない。この際、民主党政権はマニフェストの破たんを認め、総括したうえで、新たな統治論を明示すべきではないか。首相・野田佳彦は、9月6日事務次官を集めて訓示、「私どもの政権は、やるべきことはやるという姿勢を貫徹したい。政治家だけで世の中をよくすることはできないので、皆さんの全力を挙げてのサポートが必要だ」と述べた。事実上の事務次官会議復活の宣言である。官房長官・藤村修も7日、これまでの「連絡会議」のようにテーマを震災対策に限定せずに、広く政策全般を協議する方針を明らかにした。毎週金曜日の開催に定例化する方針だ。 記者団から「事務次官会議の復活ではないか」との質問が出されたが、「連絡会議は決定機関ではなく、官房長官も入るので、内容的に違う」と反論した。
この反論は明らかに、カラスをサギ言いくるめる論理破たんである。そもそも事務次官会議の構成員には官房長官が入っており、多忙を理由に出席しなくなっただけのことだ。官僚のトップが政策を協議し、事実上意見をとりまとめる会議が、決定機関でないという位置づけなら、単なる諮問機関かということにもなる。もともと事務次官会議には「設置根拠法」がなく、明治初期の内閣制度創設の頃から法令上の根拠がない非制度的機関として存在し、会議を主宰するのは現在の官房長官に当たる内閣書記官長であった。平時は閣議の前日の月曜と木曜に開かれ、提出法案などの最終確認を行うが、会議の存在がどれだけ各省間の調整と意思疎通に役立ったかは計り知れない。これを愚かにも2009年9月に、ちゃぶ台返しでひっくり返したのが首相・鳩山由紀夫であった。廃止の根拠は、民主党が2009年衆院選マニフェストで「政治主導を確立することで、真の民主主義を回復する」として、「事務次官会議を廃止し、政策課題は閣僚委員会が調整する」と明記していたことにある。
この行政の中核とも言うべき事務次官会議の廃止が、2代にわたる民主党政権の迷走となって跳ね返った。ガソリン税の暫定措置法をめぐるごたごた、普天間問題、尖閣事件、大震災対策、原発事故対策など、全ての重要案件が迷走したのは、事務次官会議廃止に起因していると言っても過言ではない。大臣ら政務3役と官僚との間で意思疎通がうまくいかず、行政の停滞、混迷ばかりでなく、信じがたいような連続失政を繰り返したのだ。廃止はタコが自分の足を食う結果を招いた。辛うじて「まずい」と気がついたのが首相・菅直人で、就任早々「官僚こそ政策や課題に取り組んできたプロフェッショナルだ」と表明し、官僚との歩み寄りに乗り出したが、狭量で、官僚を呼び出しては怒鳴るのがたたって、官僚が離反、政治の体をなさなくなったのだ。そして大震災が発生、事務次官会議不可欠の事態に陥り、「連絡会議」としてなし崩し的に会議がもたれるようになった。民主党がマニフェストで高らかにうたった「政治主導のための閣僚委員会」なるものは、半年以上どこに消えたか、影も形も見られなくなったのが実情だ。
こうして野田による事実上の事務次官会議復活となったが、党内には小沢一郎などマニフェスト至上主義が根強く残っている。7日も小沢は、「党の原点忘れるべきでない」と政権公約見直しにクギをさしている。政府サイドも、党内からの「マニフェスト違反」の声を恐れて、対応にごまかしがある。今の政府の対応は「事務次官たちのノウハウはほしいが、事務次官会議としての復活は避けたい」という、当面糊塗策があるのだ。統治機構の中核となる会議の存在をごまかしで、あいまいなままにしておいてよいのだろうか。正式に「事務次官会議」を名称も含めて復活させ、目的、機能、責務の明確化を図るべきだ。要するに、子ども手当の廃止を3党合意で決定しておきながら、大量のパンフレットを刷って子ども手当存続を唱えた「こすっからい」民主党政治が、ここでもみられるのだ。大震災という危急存亡の対策も、事務次官たちが協議しながら、その立ち位置が不明確では、責任の所在もあいまいになる。要するに、2009年マニフェストは現実政治にそぐわない「諸悪の根源」であり、野田はさっさとその誤りを認めて、根本から見直す勇気を持つべきなのだ。ごまかしは愚直な「どじょう政治」にそぐわない。
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