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2011-09-02 00:00
(連載)バイデン氏訪中と「危険なささやき」(2)
高畑 昭男
ジャーナリスト
巨額債務へのきちんとした対応を求められる米国は、弁明と守りに徹せざるを得なかった。これに対し、中国は余裕の立場で「相互信頼」を売りつける。そうした力関係の変化が、先のようなやりとりとなって現れたのではないだろうか。バイデン氏は、胡錦濤国家主席、温家宝首相との会談でも、債務問題や米経済の立て直しをめぐって「米国の責任ある対応」を求められたという。
今年1月、胡錦濤国家主席がワシントンを公式訪問して行った米中首脳会談では、評判の悪い「核心的利益の相互尊重」という言葉が影をひそめていたが、今回のバイデン氏と中国首脳らとの会談では、チベット問題や台湾問題を引き合いに出して「核心的利益を尊重せよ」と、改めて注文されたともいう。ほんの半年ほど前までは、人民元、海洋進出拡大、人権問題などで中国に「責任ある大国」の行動を求めていたのは米国であり、日本だった。債務問題を機に、米中の力関係が揺らぎ始めたとすれば、日米同盟にも憂慮すべき流れを生みかねない。日本が警戒すべき点は、ここにあると思う。
米大統領選は実質的に今秋から動き出す。とりわけ軍事費はどの国でも平時の予算削減の標的になりやすい。米議会や世論が内向きに転じて、海外プレゼンスの合理化に走ったらどうなるのか。ゲーツ前国防長官やパネッタ国防長官、クリントン国務長官らは「アジア太平洋のプレゼンスを削減すべきでない」と口をそろえているが、油断は禁物だ。ただでさえ、民主党政権下の日本は米軍普天間飛行場移設問題で迷走し、米軍再編完了のめどが立たない。米議会の一部には、現行計画を見直して、嘉手納空軍基地の機能の一部を三沢やグアムに移す構想もある。そうなれば、中国や北朝鮮の脅威に対抗する日米の抑止機能や有事対応も再調整を迫られかねない。何よりも、合理化・削減の波が在日米軍を含むアジア太平洋に至らないことを望みたい。それでは中国の思うつぼになるからだ。
そうした意味で「巨額の軍事費と社会保障費を削減しなければ、一層の格下げを招く」という上述の中国の要求は、米国内の債務削減推進派に向けた誘いであると同時に、日米同盟の弱体化につながる「危険なささやき」でもあるといえるだろう。東日本大震災後の復興に加え、巨額の構造的債務や超円高を抱える日本も苦しい。だが、こういうときだからこそ、日米両国が支えあって、同盟を強化・充実しなければ、中国に対抗していけない。それなのに、訪日したバイデン氏と菅直人首相との会談ではそんな危機感も共有できず、同盟強化の具体的な討議も聞けなかった。バイデン氏が改めて日本の政治に落胆して帰国したのでなければ幸いだ。(おわり)
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