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2011-09-01 00:00
(連載)バイデン氏訪中と「危険なささやき」(1)
高畑 昭男
ジャーナリスト
鳴り物入りで行われたバイデン米副大統領の中国訪問が終わった。当初は7月に訪問を予定していたが、債務危機のあおりで1カ月近く遅れたという。そのせいか、バイデン氏と習近平・中国国家副主席が初の公式会談(8月18日)で交わした「米国にとっては中国との緊密な関係の確立が何よりも大切だ。世界経済の安定が米中協調にかかっていると確信する」(バイデン副大統領)、「中米は相手の戦略的意図を正確に判断し、絶えず戦略的相互信頼を増進する必要がある」(習近平副主席)というような会話にも、債務危機後の両国の力関係の微妙な変化が象徴されていたような印象を受けた。端的にいえば、「守りのアメリカ」と「余裕たっぷりの中国」である。
台頭を続ける中国の外貨準備高は今や3兆2千億ドル(約245兆円)、米国債保有額は1兆1千億ドル(84兆円)を超える。米格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の格下げに踏み切った8月5日、その中国は国営新華社通信を通じて「中国には、最大の債権者として構造的な債務問題対処と中国のドル資産の安全確保を要求する当然の権利がある」と論じた。
それだけではない。新華社論評は、オバマ米政権に対して「借金依存症を改めよ」と直言し、さらには「巨額の軍事費と社会保障費を削減しなければ、一層の格下げを招く」という要求も突きつけた。それが中国指導部の見解であることはもちろんだ。唯一の超大国の弱みにつけ込んで「そこまで言うか」という気もするが、米国にとって中国が世界最大の債権国であることはもはや「世界の常識」でもある。しかも、軍事費と社会保障費の削減は、米国民の間でさえも有力な声の一つになりつつあることを見落としてはならないだろう。
実際、米国の草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」なども、軍事費、社会保障費の削減を含む「小さな政府」を来年秋の大統領選の主要な争点にしようとしている。それだけに、再選を狙うオバマ大統領も、「勝手なことを言うな」と中国の要求をむげに一蹴できない内政事情を抱えている。バイデン氏の訪中はその約2週間後である。同氏の補佐官は「訪中の主眼の一つは次期指導者(習近平氏)と緊密な関係を築くことだ。これは米中関係の未来に対する投資でもあるのだ」などと語っていたが、現実はそれ以上に、中国要人に対して米経済・米国債の信頼性を説得するほうが切実な任務だったとみるべきではないだろうか。(つづく)
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