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2011-08-31 00:00
野田の「輿石人事」は、両刃の剣の危うさ
杉浦 正章
政治評論家
自らを「ドジョウ」と名付けた首相・野田佳彦の意図は、2代続いたパフォーマンス政治の悪印象を「泥臭さ」で打ち消そうというところにある。じつに巧みな政治手法であり、マスコミがはやしたてて当面は成功している。「ドジョウ宰相」はご祝儀相場もあって支持率60%~70%くらいいくかも知れない。しかし、どうも民主党の政治家はやりすぎるから、やがて「ドジョウが出てきて今日は」の“パフォーマンス”にも飽きられるだろう。そのドジョウ宰相が最初に断行した人事が参院議員会長・輿石東の幹事長起用だ。相田みつおの言葉「どじょうがさ金魚のまねをすることねんだよなあ」を教えたのも輿石だから、ドジョウの取り持つ縁ということになる。しかし、輿石は紛れもなく、穴蔵から小魚を狙うオオサンショウウオ小沢一郎の“執事”だ。ドジョウが不気味にもオオサンショウウオに丸のみにされる危険が出てきた。
輿石は顔を見る度に、かっての田中派会長・西村英一を思い出す。西村はシミで顔が汚れているから「汚れの爺さん」と親しまれた。シミの出具合、痩せ具合、年齢、切れ味などそっくりだ。おまけに刑事被告人に頼られているところまで似ている。しかし西村は、田中角栄に時々苦言を呈したり、忠告したりしていたが、輿石は「小沢丸ごと礼賛」であり、根本的に違う。その証拠に、記者団が小沢の悪口を言うと激怒する。かって小沢の政治家としての道義的進退について問われ、「ふざけるな!」と怒鳴った。小沢処分決定に際し、「処分すれば造反が起きて、総辞職か、解散しかなくなる」「衆院で3分の2を確保出来なくなる」と脅すといった具合だ。日教組の権力闘争のやっちゃ場をくぐり抜けてきただけあって、脅しは陰湿だがうまい。最近まで「推定無罪の原則から言って、裁判所の判断が出る前に処分すべきでない。新しい代表の下で、党員資格停止は凍結なり、解除なりすることが望ましい」と処分見直し論を公言していた。
この輿石を幹事長に起用した背景をみると、小沢側の幹事長ポストへの執着がいかに激しいものであったかが分かる。小沢は、前原誠司にも要求して断られ、野田で実現したのだ。野田は当面の挙党態勢を確保するために、自ら内堀を埋めてしまったのだ。「入小沢」の印象を「ドジョウ」でごまかせるのも最初のうちだけだ。小沢の狙いは、次の総選挙をろう断するところにある。というのも、小沢グループは2年前の民主党バブルで獲得した新人が多く、次の選挙では落選必至の議員ばかりだからだ。幹事長のポストを確保すれば、250億円残っていると言われる政党交付金も使いたい放題だ。候補者の調整、公認も、小沢は「直接指示」ができる。輿石も選挙技術に長けている小沢を頼らざるを得ない。選挙を小沢が握るということは、全党が小沢にひれ伏すことになるのだ。従って、党は事実上小沢支配となりかねない兆しが見える。時の首相にとって、これは大きな欠陥体制と言わざるを得まい。というのも、野田の増税路線は、これに反対する小沢のチェックが入るのだ。加えてマニフェスト見直しも停滞するだろう。
まさか、輿石はすぐに小沢の党員資格停止処分を撤回することはないだろうが、春に一審判決がシロと出れば、例え“灰色無罪”でも、撤回に動くことは間違いない。もっとも撤回しようと、しまいと、輿石幹事長人事は事実上撤回と同様の効果を生じさせる。前原が政調会長でこの党本部小沢支配を阻止できるかどうかが鍵となるが、心許ない。小沢は高笑いが止まらないのだ。野田は、党を明け渡して、自分は行政に専念したいところのようだが、小沢支配は政策にも及ぶ。自民党幹事長・石原伸晃は「政権の第一歩は3党合意を履行できるかどうかだ。マニフェストの変更についてしっかりした見解を示してもらう」とけん制している。石原は小沢の党支配が与野党協調態勢に悪影響を及ぼすと判断しているのだろう。野田にしてみれば「小沢を立てれば、野党が立たず、野党を立てれば、小沢が立たず」の絶対矛盾に遭遇することになるのだ。この矛盾には、待ったなしで対応を迫られる。第3次補正予算案の編成、来年度予算の概算要求と難題がひしめいている。ドジョウ宰相が「今日は」などと油断していると、本当に小沢サンショウウオに食われかねないのだ。その意味で輿石人事は両刃の剣の危うさを持つ。
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