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2011-08-26 00:00
小沢の「前原不支持」で民主代表選激突の構図
杉浦 正章
政治評論家
政局ファイターの元民主党代表・小沢一郎が、またまた「乱」を選択した。民主党最後の切り札の前外相・前原誠司をあえて推さずに、他の候補を推すというのだ。これで代表選は、事実上前原陣営対小沢陣営激突の図式となる。しかし自ら出馬して、菅直人を相手にしても勝てなかった小沢が、「次善の候補」を押し立てて、勝てるかというと微妙だ。むしろ総選挙を前にした危機感が前原を押し出しているのが、民主党内の潮流であり、前原を超える「選挙の顔」が見つかるかというと、容易ではあるまい。前原優勢の流れは変わるまい。自分の言うことを聞かない勢力を力でねじ伏せてきたのが、小沢政治であった。8月24日の小沢・前原会談も、前原の激高ぶりから見ても、事実上物別れであったのだろう。水面下の小沢の要求は、自分の前に前原がひれ伏すかどうかであった。まず第一に、小沢自身の党員資格処分の見直しをするかどうか。つぎに、人事で自分自身を幹事長に据える意志があるかどうか。自分が駄目なら、息のかかったものを幹事長にするかどうかであった。
しかし、前原はことごとく拒否した。他の候補者皆が小沢処分撤回の踏み絵を踏んでいるのに対して、きっぱりと「党の決定は変えない」と言い切った。幹事長人事にしてみても、前原は鳩山に対して「あなたも小沢幹事長の処遇には困ったのではないか」と逆ネジを食らわしたと言われている。これが鳩山の小沢へのご注進となり、やはり鳩山の「小沢氏も含めて挙党態勢を築こうという考えではないように思える」という発言にもつながった。小沢と鳩山が25日の会談で「激突」路線を選んだのは、前原が開き直ったからでもあろう。同日朝には議員会館の議員事務所に「政治とカネ問題を抱えた前原誠司が首相になれば、すぐ解散に追い込まれる」という怪文書が投げ込まれたが、小沢グループ幹部らは「前原氏が首相になったら、すぐに解散に追い込まれる」と全く同じことを述べており、符合している。やることが臭いのだ。前原が解散すれば、もともとバブルの小沢グループはうたかたのように消え去る危険があるのだ。
ここで浮き上がってきたのは、忠臣蔵で吉良上野介が浅野内匠頭をいじめる構図だ。しかし、今度の前原内匠頭は小沢に向こう傷どころか、致命傷を負わせる可能性がある。まず世論がテレビも新聞も「小沢アレルギー」に陥っており、表面上は「邪悪対正義」の戦いの構図が浮上し得るからだ。小沢に対して真っ正面からけんかを仕掛ける前原に、世論はやんやの喝采をする。だいたい戦わないで小沢にこびを売って、首相の座を仕留めようなどという候補は、根性が卑しいのだ。この流れを受けて、民主党の浮動票がどう出るかと言えば、前原に流れるのだ。だいたい他の候補と言っても、海江田万里、野田佳彦、鹿野道彦は前原に比べれば「二流」を免れない。その他の候補は売名目当ての雑魚ばかりだ。鳩山の言う「独自候補」なる者も、小沢、鳩山陣営150人をまとめきれるとは思えない。ささやかれる原口一博ではとても太刀打ちできまい。参院議長・西岡武夫を選択すれば驚きの選択だが、それでも数は集まるまい。人物がエキセントリックすぎて、国の首相には不向きだ。
去年9月の代表選挙の議員票は、菅が206票、小沢が200票の大接戦だったが、この200票が小沢陣営にとってぎりぎり最大限の数字だろう。小沢自らが出馬しての200票であり、他の候補ではとてもこれだけの数字はまとまらない。一昨年6月の代表選では菅が291票、樽床伸二が129票で菅の圧勝だ。小沢グループは、自由投票を強いられている。ただ今回の選挙は候補者乱立で、いずれの候補も、今回の過半数200票にに達さないこともありうる。 過半数を得た者がいない場合は、得票数の上位2名により決選投票が行われる。仮に1位が前原になった場合、他の候補が「2,3位連合」を組めば、ひっくり返される可能性もある。小沢の「独自候補」はそこまで狙っている公算が高い。また選挙に先立って27日の告示ぎりぎりまで、候補者一本化による合従連衡の動きが活発化しよう。小沢は馬鹿な戦いを展開して民主党をぐちゃぐちゃにしては意味はない。今からでも遅くはない。前原を推すべきだ。
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