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2011-08-08 00:00
「原発」を「反核」と同一視するNHKの偏向報道
杉浦 正章
政治評論家
かねてからNHKの原発報道の中立性に疑問があると指摘してきたが、6日の原爆忌における報道は、各メディアのなかでも特異なほど「核廃絶」と「原発事故」の“連動”一色に貫かれていた。神聖な祈りの場における首相・菅直人の「脱原発」への言及は、野党や識者から一斉に非難の声が上がったが、NHKは批判するどころか、確信犯的に「原爆」と「原発」を重ねる論調を貫いた。これは反核運動を原発事故で盛り上げようとする党派性の強い動きに酷似しており、厳正なる中立性が要求される公共放送の規範に明らかなる逸脱している。政府の指導はもちろんのこと、国会でも取り上げるべき問題だろう。先に指摘したようにNHKの原発報道は、自治労・全道庁労連のホームページでも「NHKは報道の姿勢を明らかに脱原発へシフトした」と大歓迎されている。原爆忌の報道がNHKの中立性逸脱の証になると注目していたが、案の定「原爆」と「原発」の“同化”一色であった。
まず前日5日の解説番組「ここに注目!」で、「あす 広島原爆の日」と題して解説委員・渥美哲が「菅総理大臣があすの平和記念式典で、エネルギー政策を白紙から見直し、原発に依存しない社会をめざす考えを表明することについて、こうしたことを求めてきた被爆者団体などは、その実現を望んでいます」と、菅の発言以前から歓迎するといった調子だった。6日夜の「ニュース7」では、原爆忌報道の全てを福島の原発事故に結びつけた。菅の「原発白紙からの見直し」発言を何の批判もなく取り上げたばかりか、市民のコメントも原発事故に関連するものだけを取り上げた。客観性を意図してか、海外メディアの記者にまで原爆と福島事故の関連をコメントさせた。アナウンサーのコメントも「核兵器廃絶を訴え続けてきた被爆者たちの思いは、今原子力利用の在り方にも向けられています」と結んだ。10分以上にわたる原爆忌報道の中で、菅の場違いの脱原発発言への批判や、原発維持を当面是認せざるを得ないという市民からの声は一切報じられなかった。つまり一方通行の報道に徹したのだ。
これは民放番組が少なくとも“両論併記型”であったのとは対照的であった。それどころか日テレは朝の番組「ウエーク」で、原爆忌を取材した結果「原爆と原発を同じ土台で話すのは違和感を覚えるという人の方が多かった」と報じているのだ。菅の発言についても、評論家・寺島実郎に「この方がどこまで国のエネルギー政策に責任を持てる立場なのかは微妙だ」とこき下ろさせている。一方、読売新聞は8月7日付の社説で、菅の発言を「『脱原発』にふさわしい場か」と題して、「世界の注目する記念式典で持ち出したのは、原爆と原発事故を重ねることで自らの主張をより効果的にアピールしたかったのだろう。鎮魂のセレモニーのいわば“政治利用”ではないか」と断じている。産経も、やはり「反核に利用される脱原発」と題する社説で「日本の将来のエネルギー政策が党派性の強い反核運動に左右されてはならない」と警告している。これと対照的に、NHKの「ニュース7」は、菅発言を批判した野党の反応まで報じなかった。その意味でも公正さを欠く“偏り”は顕著だ。自民党総裁の谷垣禎一は「難しい事柄はトップリーダーの確固たる決意がなければ進まない。やはり今の首相には限界がある」と述べ、原爆記念日を「脱原発」に利用しようとする首相をけん制した。公明党代表の山口那津男も「遠い将来の政策を縛るようなことを、退陣表明した首相が口にするのはやや無責任だ。説得力に乏しい」と批判しているのだ。
要するに、NHKの報道姿勢は、一方的な「反核と原発事故の同一視」で統一されているのだ。世界的な経済情勢が景気後退の危機に瀕している今、日本が「脱原発」一辺倒で生き残れるか、の視点に全く欠ける報道だ。少なくともこの10年、20年は原子力と化石燃料、自然エネルギーのベストミックスだけが、日本の生き残る道なのだ。また原子力の平和利用の分野で、日本が国際的に果たすべき役割は大きい。余り知られていないが、世界の原子炉圧力容器の8割が日本製鋼所で製造されている。それほど日本製原子炉への信頼度は高いのだ。圧力容器はまさに心臓部分であり、日本の技術抜きでは、世界の原発は成り立たないといってもよい。核廃絶の感情論で原発事故を論議することのみにスポットを当てたNHKの報道は、国民を心理的に誤誘導するものにほかならない。受信料で成り立っていることも全くわきまえていない。政府・国会は事情聴取し是正させるべきであろう。
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