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2011-08-02 00:00
「やらせ」の背後にあるマスコミの報道姿勢の問題点
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
原発を巡る公聴会で「やらせ」があったことに今頃気がついて、「天に代わりて不義を討つ。けしからん」といわんばかりのマスコミ報道には、いまさらのことながらあきれる他はない。あのテの集まりに「さくら」を動員するというのは、別に目新しいことではなく、おやりになっているのも、電力会社や原子力保安院に限った話ではない。そんなことはいわば公然の秘密であって、記者クラブはその体質そのままに「見て見ぬ振り」をしていたに過ぎないことは、多少なりともこの種の仕事に携わったことのある人間ならば、誰でも知っている。
だからといって、その種の動員が正当化される訳でもなんでもないが、政局の裏話が大好きで、あの領袖がおでんを食べただの、くしゃみをしただのというネタには、あれほど熱心なマスコミが、この種の話になると、ギョーカイ仲間にどっぷり浸かって、真相追求の態度を全く喪い、溺れた犬を見つけた時だけ、かさにかかって正義の使者面をするのは、片腹痛くさえある。マスコミがこのていたらくでは、一般市民たるもの、制度的にそうしたなれあいが発生しないように、目を光らせる他ないのだが、これがそれほど簡単なことではない。
一事が万事で、大学の研究費を業者のところにプールしておいて使い勝手を良くする、なんていうのも、大学関係者ならば殆ど常識に属するし、たまたま学内の権力闘争みたいな話に絡んで「告発」が発生した時だけ、表沙汰になる。それを受けたマスコミが、例によって「初めて知った。けしからん」みたいな話になっているに過ぎない。問題の根っこが、単年度使いきりのお役所式予算制度にあることは明白で、独立行政法人制度になって少しは改善されたかと思っていたのだが、どうもそうではないらしい。ありていにいえば、「計画した通りに一円の誤差もなく、ぴったしかんかんに使い切るのが予算というもので、それに従わないのは悪」とは言わないまでも、「好ましからざる事態。よって余った金額は不要額として次年度予算査定に際してアタマからカットする」という仕組みに問題があり、報道されたような事態は、そのいささかグロテスクな解決手法に過ぎない。
この制度のお陰で、新しい公益法人制度が、あろうことか、あるまいことか、「組織の収入と支出は、一致するのが大前提で、そうでないのはけしからん」とか、「百年後の支出計画まで作成して提示せよ」という、およそ正気の沙汰とも思われないような定めを置くに至った。例によって、マスコミは不勉強なのか、どこかからの根回しが届いているのかは知らないが、こうした構造的問題には全く無関心で、公益法人と言えば「不祥事」というステレオタイプの報道にしか興味がない。それでも世界に例をみない発行部数を誇っていらっしゃるというというのだから、ご同慶の至りだし、まあ、マスコミの目から見れば、大事なのは権力の側であって、一般市民ではない、ということだろう。いつのまにこんなことになったのだろう。
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