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2011-07-29 00:00
海江田が辞めれば、ポスト菅の有力候補に
杉浦 正章
政治評論家
まず「菅降ろし」が先決であろうに、民主党の代表選挙に若手が手を挙げて事実上スタートしかかっている。既成事実を作って首相・菅直人に辞任圧力をかけるのも一方法だが、なにやら号砲が鳴らないままスタートした草競馬のようで、ぱっとしない。本命は、満を持して走り出していないが、既に候補と目されている財務相・野田佳彦に加えて、「反菅」で経産相・海江田万里が急浮上している。最後はやはり元代表・小沢一郎の動向が左右しそうな雰囲気だ。前国土交通相・馬淵澄夫が手を挙げるに当たって、「当選3回を超えれば、政治家としての経験というのは一定のレベルを超えたと判断してもらえるだろうと思っている」と胸を張ったのには、驚いた。田中角栄が竹下登に「まだ十年早い」と言ったのが、竹下が当選8回のころだから、変われば変わるものである。それにつけても手を挙げ始めた連中は、本気で代表になれると思っているのか、それとも選挙近しで、売名のために代表選を活用しようとしているだけなのだろうか。
産経新聞の「今、日本の首相にふさわしいのは誰か」という調査に、馬淵0.6%、元環境相・小沢鋭仁 0.2%、元国対委員長・樽床伸二にいたっては泡沫にもなっていない0.0%だ。いくら何でも閣僚数回と党役員をこなさなければ、「首相業」にはとても耐えられない。小学校の生徒会長選びとは違うのである。まともに次期代表候補として論ずることが出来るのは、野田、海江田、農水相・鹿野道彦、前外相・前原誠司、官房副長官・仙谷由人までだろう。幹事長・岡田克也は地方選敗退が痛く、見送らざるを得まい。政調会長・玄葉光一郎、原発担当相・細野豪志は嘱望できるが、まだ早い。小沢は謹慎中の身だ。この中で今一番輝き始めたのが海江田だろう。いまや「憎悪の人」となった菅の下で、閣僚の中で1人苦労している姿が目立つのだ。菅を「鴻毛のごとき軽さ」と形容するなど、与野党のやんやの喝采を浴びている。「我慢の子」の姿は、忠臣蔵で吉良義央にいびられる浅野長矩をほうふつとさせて、日本人の感情を揺さぶるのだ。
問題は、今後の身の振り方だ。「辞任する」といいながら辞任しないまま、ずるずる留任して、菅に先に退陣されてしまっては、一挙に「男が下がる」。候補としても、落第する。小沢が「海江田は大臣を辞めれば総理になれるのに、なかなか辞めないな」と側近にこぼしたという話を朝日が報じて、なおさらその進退が注目されるところとなった。要するに海江田は「辞任カード」を切ることだけが「代表選カード」を入手できる人なのだ。だからタイミングよく辞任して菅を退陣に陥れるきっかけを作れなければ、存在価値がない。小沢が「辞めれば総理になれる」と漏らしているのは相当の重みを持つことなのだ。というのも本命視される野田は、かねてから反小沢で通してきており、これも反小沢でばりばりの仙谷が押している。前原も反小沢だが、後見人の仙谷は、前原を今回は見送らせて温存させたい考えのようだ。一方、小沢陣営も、一部には鹿野を擁立する動きがあるが、小沢が首をかしげていると言われる。それよりも小沢は、もともと親小沢の海江田人気に乗った方が得策と考えてもおかしくない。反小沢の野田と、親小沢の海江田の激突の構図になればいい勝負になる。
今回の代表選は「舌禍」「増税」「原発」「総選挙」が陰に陽にテーマとなろう。党内は2代続いた「妄言首相」に懲りている。舌禍を起こしそうもないのは野田だろう。前原、海江田は起こす可能性がある。「増税」は野田が消費税導入だが、小沢が反対であり、海江田は増税路線には慎重な発言をせざるを得まい。「脱原発」は有力候補が次々に「原発維持」の考え方を表明している。「原発見直し」を言うのは馬淵くらいにとどまっている。この結果、新政権が出来れば「脱原発」は立ち消えとなる方向であろう。野党は新政権を早期解散に追い込もうとするから、選挙向けの顔には前原が一番いいが、その場合外国人献金問題で攻撃される恐れもあり、微妙だ。前原に次ぐ大衆受けする「顔」は、海江田だろう。
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