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2011-07-28 00:00
中国の強硬化と、問い直されるASEANの存在価値
岡崎研究所
シンクタンク
南シナ海で中国とフィリピン、ベトナムとの間の緊張が高まっている折、CSIS のウェブサイト(6月21日付)で同研究所の Ernest Z. Bower が、また The Diplomat(同日付)で AEI の Gary Schmitt と Michael Mazza が、それぞれ ASEAN の課題と展望を論じています。バウアーは「南シナ海の安定を維持するために、ASEAN は一体としての政治力を高めるべきだ」として、そのために、(1)私的資格での政治家、官僚、学者等による自由な意見交換の強化、(2)国際組織としての ASEAN の機構の強化、(3)米国に「国連海洋法憲章」を批准するよう働きかける等、ASEAN としての外交の強化、(4)経済統合の強化を提言しています。
シュミットとマッザは「今や経済力でも軍事力でも ASEAN 諸国を圧倒するようになった中国は、南シナ海の問題で譲歩する必要性を感じていない。そうした中で、ベトナム、シンガポール、フィリピンは米国にすり寄りつつあるが、中国との関係を優先する国々も出て来ており、ASEAN のリーダー格のインドネシアやシンガポールはイニシアティブを取りかねている。米国が財政赤字削減のためにこの地域の兵力を縮小すれば、この地域は中国とインドの間の勢力争いの場となってしまうかもしれない」と指摘し、「ASEAN はこの30年間重要な役割を果たしてきたが、ここで今までのやり方を変えないと、中国やロシアといった周辺の大国にとってばかりか、加盟国自身にとっても意味のない存在になってしまう」と言っています。
ASEAN は周辺の政治・経済状況が悪化するたびに、危機を指摘されてきました。今回の情勢も、世界金融危機後、米国経済復活の見通しが立たない中、中国が自らの経済力に増長して自己主張を強めたことによる一時的現象かもしれません。金融危機以前は、中国指導部は米国との関係から得られる経済的利益を重視し、そのために東アジアの現状維持は必要だとして、それを支持してきました。この中国指導部の立場は現在でも変わっていないようであり、米国経済が立ち直れば、軍部等の強硬な言動はもっと抑制されるかもしれません。
一方、日本はこれまで、ASEAN を活用して、東アジアにおける集団的フォーラム(ASEAN+3、東アジア首脳会議等)の形成を図ってきましたが、これは、ASEAN と敵対するのを好まなかった中国を関与させる上で有効なやりかたでした。ところが、ASEAN 自身が中国との紛争の当事者になってくると、ASEAN を出汁にして日米中韓等の間のバランスを図るやり方はとれなくなります。これは、日本や韓国にとってアジアでのバランス外交を進める上で、ASEAN の扱いが難しくなることを意味しますが、反面、米国、中国、インド等の大国の間、さらにはASEAN との間で舞台回しをすべき日本の役割が高くなる可能性もあると言えるでしょう。
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