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2011-07-18 00:00
目に余る、メディアの不勉強さと体制へのすり寄り
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
ペンタックスをリコーが買収するという記事を目にして、「いささかの感懐のようなものなきにしもあらず」だ。というのも、筆者がカメラというものに関心を抱くようになった頃(というのはほどとんど半世紀以上昔のことだが)、ペンタックスとリコーの製品イメージというのは、メジャーリーグと1A位の差があった。かたや当時登場したての一眼レフを代表する高級機。ハッセルブラードやゼンザブロニカとまではゆかないが、カメラ店のウィンドウに飾られているのを、憧れの目で眺める存在。もう一方のリコーは、二眼レフ全盛時代にあって、最も安価なリコーフレックスのメーカーとして知られていた。お小遣いを溜めれば、何とか手の届く存在だったのである。
その後両社の経営に何が起こったのかは詳らかにしない。のみならず「名門老舗が新興後発の軍門に降る」なんていうのも、最近では別に珍しい話でもなんでもない、のだろうとは思う。「そうした優勝劣敗こそが、産業体質を強くする」という一面が存在するのも、否めまい。逆に言うと、そうした事態が起こりえないケースというのは、お役所や政治が介入する結果であって、その成果たるや「死屍累々」なのは、人の知るところである。
これまでに何度破産してもおかしくないエアラインが手厚く保護される一方で、イコール・フッティングとは申しかねる風土の中で、善戦健闘している会社もある。善戦健闘しても、ペンタックスを買収するような訳にはゆかない。いまだにタクシーの台数が許認可に関わるというのも不可思議だし、馬鹿げた農業政策、第一次産業政策もこれに準じよう。「パブリック・ユーテリティもその最たるものだ」という認識が最近になってやっとでてきた。
メディアと言われ、ジャーナリズムと言われるビジネスの不勉強さと、体制への擦り寄りが、こうした現象をはびこらせている最大の理由の一つだ。相撲協会の親方株の売買問題が、協会の公益法人として認定されるかどうかに大きな障害になる、なんていう気の抜けたビールのような報道しかしない。今回の法改正に伴う公益認定、さらには公益法人制度それ自体が、どれほどひといものであるかについては、勉強する気もなければ、問題意識もない。そのくせ何やら高みに立って、手あかがついた誰も異議を述べられない名論、卓説をおはきになる。一方で、電子メディアに期待が寄せられているのだが、思ったほどの影響力を保持するには至っていないようだ。
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