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2011-07-08 00:00
大阪への副首都機能分散ではなく、京都への首都移転を
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
東京の石原知事と大阪の橋下知事が「大阪に副首都機能を分散すべきだ」という点で意見が一致したという。橋下知事の「国会議員百人よりも石原知事の一言の方が重みがある」という一言は、例によってピリリと人を刺す(sting)趣きがあるが、その点については深入りしない。それよりも、今回の大震災の事後処理に当たって、長期的視野に立った幾つかの重要な視点がほとんど欠如していることを、ここでは指摘しておきたい。
政治経済機能の東京一極集中の持つ脆弱性についての論議の少なさはその代表的な例だ。あれほど多くの製造業が、今回の教訓に学んで機能分散を図っているというのに、こと政治に関しては、ほとんど危機意識すらない(あえて細部には拘らないが、ここでいう「政治」とは、広く財政経済機能をも含むものと了解されたい)。これは、単なる代議士諸公の知的レベルの低さとか、危機意識の欠如、あるいは永田町の風土病で片付けられる話ではなさそうだ。
それどころか、首都機能分散の話は提起されて久しいし、現に候補地のいくつかまで特定されているのは、周知の通りだ。にもかかわらず、この問題がさっぱり進展を見せないのは、地域への「うまい汁の分配」という感覚でこの問題を捉える向きが少なくない他、この問題に切実さを感じる人が少ないこと、そして何よりも、変革に向けての強い動機付けが欠如していることにある。その意味では、転換には新たな哲学が必要だということだろう。
橋下知事には悪いが、ここは「大阪ではなく、京都に首都を移転するのがよい」のではないか。天皇家も明治維新に際して、意ならずも東下りをされた経緯がある。そろそろ京都にお帰りになる良い機会だと思うのだが。世界遺産、世界遺産とはやし立てる向きが多いが、欧州の首都には歴史的遺産価値の高いところが少なくない。ここまで無秩序に拡散してしまった東京をきっぱり諦めて、まだ都市破壊が辛うじて許容範囲内にある「古都」京都に新たな生命を吹き込む良い機会だと思うのだが。もちろん、スチールとガラスを満面にちりばめた森ビル、三菱地所的な「再開発」ではない、日本人の美意識が問われるのは言うまでもない。未来の世紀に向かって「21世紀の日本人」が何を遺せたか。歴史の検証を受ける良い機会ではないか。
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