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2011-07-01 00:00
最大の問題は放射性廃棄物の最終的な処理方法
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
福島第1原発事故をきっかけに、世界各地で原発の安全性が問い直されているが、原子力発電には、地震・津波のリスクだけでなく、さらにより根源的なリスクを伴うことを忘れてはならない。それは、放射性廃棄物の最終的な処理方法がまだ見つかっていないということである。すなわち、核燃料の燃焼から廃棄までの核燃料サイクルが完結していないにもかかわらず、人類は日々、放射性核廃棄物を生み出し続けてしまっているという事実であり、それはほとんど国際社会全体がかかえる一つの大きな絶対矛盾といえる。
2012年から、フィンランドが、同国南西部ボスニア湾のオルキルオト島に、太古の岩盤層を500メートル以上掘り下げたところに、オンカロ(「隠し場所」の意味)と呼ばれる世界初の核廃棄物の最終処分場を稼働する予定である。来年から稼働し約100年間、核廃棄物をそこに運び込み、満杯になったところで、封印して永久に保存するという。しかし、この方法も安心していられるような代物とは考えにくく、私にはほとんど悪いお伽噺のように思える。半減期が2万4千年と非常に長いプルトニウム239を基準にすると、核廃棄物が出す放射線が生物にとって安全なレベルに下がるまで10万年かかるといわれる。10万年というのは、人類誕生から今日に至るまでの途方もなく長い歳月に相当する。今後10万年の間に、未来の考古学者がオンカロを「発掘」してしまうなどという可能性は大いにありうると考えなければならないであろう。
電力需給を考えれば、現実問題として、まだしばらくの間、原発にも一定の役割をはたしてもらう必要がある。しかし、基本的には再生可能エネルギーの促進を中心とし、長期的には原発はフェード・アウトさせていくべきではないだろうか。換言すれば、今後は、大規模発電から分散型発電ヘシフトさせていかなければならないということである。今の日本が直面している極めてタイトな電力需給を考えると、分散型発電への劇的なシフトが必要とされるわけであり、今すぐにでもそうした変化を起こさなければならない。それには、どうしても政策上の強力なインセンティブが欠かせない。現在の機器の性能でも、太陽光発電と燃料電池等を利用したガス・コージェネレーションを併設すれば、一般家庭用の電力需要はすべて各戸の自家発電で賄える。問題は、コストである。ある一定以上の大きさの住宅を新築する人のほとんどすべてが、こうした自家発電設備を備えたくなるような政策上のインセンティブを与えれば、状況は大きく変わることになろう。
今回の緊急事態を受けた東京都の政策対応は、比較的早かった。『東京緊急対策2011』として、6月の補正予算に「電力危機突破のための東京都の緊急対策」を盛り込み、太陽光発電に対する補助を復活させるとともに、今回新たにガス発電給湯器や燃料電池などのコージェネレーションに対する補助も決める見込みである。それに反して、国の対応は非常に鈍い。太陽光発電システムに対する補助については、昨年度は1キロワット当たり7万円であったが、事業仕訳けの結果を受けて、今年度は4万8千円に大幅に減額されたが、震災後の電力緊急事態の中にあっても、いまだに見直しがなされておらず、そのままである。また、家庭用太陽光発電の余剰電力買取り価格も、昨年度の1キロワット時当たり48円から今年度は42円に引き下げられたままである。民主党政権は、再生可能エネルギーに力を入れるというのなら、この際、分散型発電システムに対する思い切った補助を行うべきである。他方、太陽光発電の効率はまだ十分高い水準にあるとはいえず、関連企業には、技術開発を一段とスピード・アップさせることを強く期待したいものである。ところで、これまで、多くの住宅メーカーは、オール電化住宅を推奨してきたが、現在電力需給の状況を考えると、これはもっての外である。政府は、オール・電化住宅に対しては、むしろ政策上のペナルティーを課すぐらいのことをすべきである。事業所、家庭ともに、電力需要を極力自前で賄うよう努力すべきである。
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