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2011-06-24 00:00
再稼働は菅が「原発遍路」でみそぎを果たすしかない
杉浦 正章
政治評論家
最近の首相・菅直人の薄笑いには「してやったり」の思惑がうかがえて生理的嫌悪感を覚えるが、少なくとも70日はつき合わざるを得まい。天を恐れぬ内閣改造まで検討しているとあっては、もはや天罰が下るのを待つしかない状態に至った。しかし首相であるからには、“保身”のほかにやるべきことがあることを忘れてもらっては困る。自ら招いた電力危機への対応である。「浜岡停止」に端を発して全国的に原発の再稼働不能状況が続き、このままでは「日本沈没」の大不況が目前に迫りつつある。「脱原発解散」で政権延命を目指す前に、少しでも誠意が残っているなら、菅は再稼働に向けて原発立地自治体を回る「原発遍路」の旅に出るべきだ。
この政権ははっきり言って腐っている。政権の体をなしていないのだ。なぜかと言えば、一にかかって菅の延命を軸に政治の私物化が横行し、復旧・復興・原発の3点セットが進展しないからだ。とりわけ原発政策が他人事のようになっている。6月23日も共産党委員長・志位和夫との会談で官房長官・枝野幸男が「一般社会の常識で考えても、地元の知事が『絶対に反対』と言っているものを再稼働させることはできない」と民放コメンテーターのような無責任発言をした。志位に「『知事が反対したら、再稼働はできない』と言ったことは非常に大きい」と言質を与えてしまった。一方で、経産相・海江田万里は原発安全宣言をして再稼働させようとしている。菅は菅で、「私も考え方は経産相とまったく同じ。きちんと安全性が確認されたものは、稼働していく」と発言しているが、行動が伴わない。むしろ思惑は逆だ。石川県知事・谷本正憲が「一体、どこが最終的な責任を持つのか」と不信感をあらわにしているが、これは各県知事に共通した認識だ。
要するに、この政権は、ことの重大性を理解していないか、あえてほおかむりしているのだ。各県知事が原発の再稼働が出来ない理由の全ては、「浜岡」に起因している。「菅が浜岡停止」の理由を地震・津波対策に絞って表明したことが発端なのだ。地震列島の原発で地震や津波を無視できる原発はないにもかかわらず、菅が人気取りのパフォーマンスで打ち出した施策が、今になって因果応報の跳ね返りをみせているのだ。関経連会長・森詳介が「浜岡原発の停止要請がなければ、様子はガラッと変わっていた。国がきちんと地元に説明し、安心が得られるようにしてほしい」と述べているとおりだ。反対運動に直面して、地元知事たちもお手上げの状態に陥っているのだ。
来年春には54基の原発全てがストップするが、それを待たずに7月からの電力事情の窮迫が目前に迫っている。東京電力ばかりか、関西電力や、九州電力が、窮地に陥りつつあるのだ。原発停止による電力不足は、我が国経済を直撃して大不況を惹起する。生産拠点の海外移転を一層促進し、雇用にはマイナスの作用をもたらす。何より重要な被災地の復旧・復興にとって大きな足かせになるのだ。事態は急を要する。原子力安全・保安院は審議官を派遣して福井県に原発再稼働を促したが、事実上の門前払いだ。海江田も立地県を順次訪問する予定だが、多くの知事が首相本人の説明を求めており、海江田レベルでは問題の解決につながらないだろう。ここは浜岡を止めた菅自身が地元に行って説得しないと、知事たちは振り上げた拳を下ろせない状況に陥っているのだ。
菅は浜岡を「例外的な事情がある」と指摘して「全ての原子炉を止めることは、あまりにも経済への影響が大きい」と述べているが、言うことと思っている事は逆だ。つまり延命のための「脱原発解散」を狙う以上、再稼働とは矛盾する。「一応発言をしておいた」くらいの意味しかもたない。自分のしたことの後始末をしない例えを「兎の産みっぱなし」というが、少しでも国を思う気持ちと良心が残っているのなら、「生みっぱなし」のまま辞めて、四国遍路に出る前に、原発遍路でみそぎを果たすべきだ。そして自らの浅慮を身をもって知るべきだ。確かに原発の「安全神話」は崩壊したが、共産党、社民党、市民運動家のプロパガンダで「危険神話」に陥れば日本は間違いなくアウトだ。
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