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2011-06-17 00:00
ファタハとハマスの合意の意味するもの
岡崎研究所
シンクタンク
『ニューヨーク・タイムズ』紙5月8日付社説が、4日にカイロで署名された「パレスチナ統一政府を樹立する」というファタハとハマスの合意について論じています。すなわち、「ハマスの指導者メシャールは、2国家問題解決のために努力すると言っているが、ハマスは暴力路線やイスラエル否定を止めるとは言っておらず、ファタハとハマス双方の治安部隊の統合や協力が上手く行くかどうかもわからない。このように今回の統一政府樹立の合意には多くの懸念が持たれる。他方、イスラエルはこの合意に反対し、米国にパレスチナ援助の停止を要求しているが、オバマ政権は合意を歓迎はしないながらも、当面援助は続けるとしている。また、アッバスは、国連総会でパレスチナ国家承認を獲得したいと思っており、今回の合意はそれに資すると思っている。こうした中で、米・露・EU・国連はハマスにイスラエルの生存権を認めるよう要求すべきだし、米国はネタニヤフに交渉に戻るように圧力を加えるべきだ。イスラエルとパレスチナは、自分たちだけで和平の停滞を打ち破ることはできない。そして、和平の停滞は絶望と過激主義につながるだけだ」と言っています。
これは「イスラエルの生存権を否定するハマスの立場が変わっていないのに、ファタハとハマスの統一政府樹立の合意はうまく行くのか」と合意に疑問を呈しながらも、「米国は、独自の解決案を提示して、和平プロセスを進めるべきだ」と主張するもので、内容として目新しいものではありません。米国は確かに独自の解決案をこれまで提示して来ませんでしたが、これは米国内政治上、できなかったわけで、入植地建設モラトリアムの延長さえ、ネタニヤフに呑ませられませんでした。
米国が、場合によっては、国連でのイスラエル関連決議について態度を変えるとか、イスラエル援助を止めるなどの思い切った決断をしない限り、米国がイスラエルに振り回されるという状況は変わらないでしょう。ただ、今回のファタハとハマスの合意は、和平交渉の停滞に加え、エジプトでの政変とシリア=ハマス関係の緊張を背景としていますが、社説はこれにはあまり触れず、「アラブの春」などなかった時と同じような主張をしています。
しかし、エジプトでの政変は、和平を巡る状況をも変えてしまう可能性を持っています。ハマスは、元々エジプトのモスレム同胞団のパレスチナ支部であり、エジプトで同胞団が勢力を伸ばしそうな今、ハマスは、シリアよりエジプトを頼る可能性があります。また、イスラエルがパレスチナ統一政府に強硬に対処すれば、エジプトがイスラエルへの態度を変えるかもしれません。いずれにしても、エジプトが従来のようにイスラエルによるガザ封鎖に協力することはないでしょう。米国も、イスラエルも、エジプトが今回の合意の背後にいることを認識して、エジプトともよく協議することが肝要だと思われます。
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