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2011-06-14 00:00
亀井こそ菅切腹の介錯をせよ
杉浦 正章
政治評論家
「殿が『切腹する』と、やいばを当てようとしている時に、それより先に部下が『介錯(かいしゃく)を先にやります』と言っている。政権与党の体をなしていない」と国民新党代表の亀井静香が嘆いている。政治家というのは、物事を自分に有利なように解釈する度合いで器量が分かるが、この発言は大きく事態を見誤っている。殿は切腹は承諾したものの、やいばを当てようとしないのだ。当てようとしていないから、かっての忠臣たちまでが「殿お覚悟を!」と言っているのだ。逆に、亀井は自ら介錯を買って出るべきだ。
江戸時代も中期になると、切腹自体が簡略・儀礼化し、いわゆる「扇子腹」の形式で行われるようになった。切腹人が小刀・脇差に見立てた扇子に手を伸ばそうとした瞬間に介錯することがほとんどであった。せめて菅が扇子にまで手を伸ばせば、介錯人が踏み切るのだが、菅は自分の延命しか考えていない。仙谷由人が「6月末までの退陣」を言えば、今度は「1次補正の追加的な2次補正の編成を、自分の手でやる」と言い出した。「少なくとも7月中旬までは辞めない」ことを宣言したつもりなのだろう。「浜岡パフォーマンス」で全国の原発が止まったまま動かず、関西電力、九州電力など、日本全体が夏の電力事情の悪化に直面しているときに、「世の中をもう一度ひっくり返さないといけない。脱原発で行く」と意気軒昂だという。そこには市民運動家的なパフォーマンスだけがあって、日本経済の窮状など念頭にないのである。
亀井は「秋口には気候もよくなる。菅総理大臣も、秋風が吹くころには、お遍路に出たいと思っているのではないか。それまでにまなじりを決して震災対策を行い、めどをつけたいと思っているのだろう」とも述べた。しかし紛れもない緊急事態のこの時点で、さらに3か月間の菅の居座り、すなわち政治空白は大きい。復旧・復興にとって致命的でさえあり得る。政局の大きな潮流は菅が辞めれば閣外協力など与野党の協力態勢が動き出すところまで来ている。菅が全てをストップさせている事態に、亀井はあえて目をつぶっているのだ。なぜ亀井がここにきて、しゃしゃり出始めたかということだが、ひとえに保身がある。つまり与野党の協力態勢が整ってしまえば、民・自・公が政治を動かす方向となり、国民新党の出る幕はないのである。存在意義がなくなり、総選挙では消滅しかねない事態すら予想されるのだ。亀井の言うことなど誰も聞かなくなる。それが恐ろしいのだろう。
民主党内の権力闘争についても、亀井は「嫌な相手と一緒にいることはないから、この際、整理したらいい」と述べ、菅の後継を決める党代表選を機に、「小沢」と「非小沢」で党を分裂させるべきだと主張している。亀井は「両勢力はカルチャーや政策・理念がメチャクチャ違う。それが混ぜご飯みたいになっており、さらに今はおかゆの状態だ」との主張だ。この発言も、乱に乗じて政界再編を巻き起こして、自らの保身を計ろうという意図がありありだ。菅も四面楚歌の中で亀井のような、いわば「政治屋」の言葉を借りなければ保身を計れないところまで来ている。しかし亀井のお遍路発言についても、ネットではさっそく「お遍路はみんな真剣に回っている。政治家がパフォーマンスで回れば遍路道がけがれる」という反対論が巻き起こった。逆効果である。もはや亀井は、世論の支持の少ないミニ政党が、政治テクニックだけで政治を動かせる潮流ではないことを悟るべきだ。
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