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2011-06-06 00:00
(連載)EASをアジア版OSCEとして活性化させよ(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
第3に、米露の参加によって、EAS(東アジア・サミット)に当初の目的とは異なった域内安全保障関連の枠組みとしての意味が出てきたということがあり、この点については、今後注目すべきである。つまり、EASに「瓢箪から駒」的な意味合いが出てきたということであろう。というのは、昨今、中国がかなりはっきりとしたハードライン外交をとり始めたため、日本を含む近隣諸国は東シナ海や南シナ海で厄介な問題に直面しているが、こうした問題への対処、すなわち、域内の紛争予防のための安全保障上の枠組みとしての可能性が出てきたからである。
実際、昨年11月9日、ジャカルタ訪問中のオバマ大統領は「南シナ海の問題は、EASで話し合うべきだ」と語った。すなわち、EASには、今後、米露加を含む56カ国が参加する欧州安全保障協力機構(OSCE)のアジア版的なものになっていく可能性が出てきたということではないかと、筆者は理解している。従来、「北朝鮮を含む6カ国協議がうまくいけば、それが東アジア地域の安全保障の枠組みになる可能性があるかもしれない」と言われてきたが、むしろEASにその期待が出てきたわけである。以上述べたように、EASは、地域経済統合の母体としてはほとんど意味を失っていくとみられるが、地域の紛争予防のための外交・安全保障の枠組みとしての意味合いがにわかに出てきたのである。
もしそうなれば、EASは地域統合そのものではないが、アジアの地域統合を推進する上での重要なインフラを提供することになるであろう。それにしても、EASをベースとし、東アジア経済統合をテーマとして発足した東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)は、今後何をするつもりであろうか?すでに述べたように、EASは、地域統合とりわけ経済統合に関しては、ほとんど何もすることがないとみられるからである。「二階イニシアティブ」を実現させた経済産業省の尽力は多とするものの、参加国はやはりEAS16カ国(当時)ではなく、APT(アセアン・プラス3)13カ国とすべきであった。私は、当初から「ERIAはAPTをベースとして発足したとしたら、どんなに良かっただろう」と指摘してきた。
経済産業省が、ERIAのベースをEASとしたのは、外務省を含む日本政府が全体としてそうした外交政策をとってきたからであり、日本政府全体の責任である。私は、本欄でも、EASはいずれさらに参加国(含む大国)が増える可能性があると指摘してきた。日本以外のアジア諸国は、EASを形骸化しようとしているとみていたからである。日本政府は、明らかに、アジア地域統合について先を読み違えたのである。他方、金融面ではAPT財務大臣会合の枠組みを通じて、先ごろチェンマイ・イニシアティブの事務局(APTマクロ経済リサーチ・オフィス)がシンガポールに設立されるなど、比較的順調に地域統合が進展している。こちらが、アジア地域統合の本筋であることを忘れてはならない。この際、日本政府全体としても、APTをアジア地域統合の中心に据えるよう大きく政策転換すべきである。(おわり)
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