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2011-06-06 00:00
菅は月内退陣で「時限大連立」に展望を開け
杉浦 正章
政治評論家
数々の政治家人生を見てきたが、悲喜こもごもで、これほど人間性に富む職業はまれだ。だから筆者の書くものの根底には、政治家性善説の感情が流れていると思う。しかし今度のケースだけは「虫ずが走る」といった最大限の表現が適切だ。嫌悪感のみを覚える。欺瞞の首相・菅直人、小沢をだまして自らは菅にだまされた前首相・鳩山由紀夫。欺瞞のお先棒を担いだ揚げ句、「まずい」と見るや、「菅離れ」に転向しつつある民主党幹事長・岡田克也。唾棄すべき蛇蝎(だかつ)のごとき政治家群像である。小沢一郎は6月5日の読売川柳に「内輪もめ起きるところに居る男」とあるが、今回は「居なかった」うえに、鳩山からだまされのだから、まだかわいい方だ。政界には大震災復旧・復興のため「菅退陣」を条件に「時限大連立」の機運が高まってきた。かくなる上は菅の早期退陣が、政治空白回避のためにも何よりも大切だ。とにかく鳩山だけはだませても、代議士会という政治のプロが集まった大舞台で、菅は詐術を弄してはいけない。すぐに足が付く。一方で、盟友小沢を裏切ることになるのは分かっていて、不信任案本会議の2日朝まで「賛成する」とうそをつきまくり、結局菅にだまされた鳩山も鳩山だ。ルーピーの名に毫(ごう)もたがうものではない。
そして、菅と企んで幹事長ともあろうものが、不信任案否決のため党員をだますという“禁じ手”を使ったのだ。「文書に辞任と書いてない」と岡田は不信任案否決直後に否定したが、政治力学の基礎の勉強が足りない。一つの方向、つまり「不信任案否決」に民主党全代議士を動かすという“大それた行為”の根底に詐術があれば、それは見抜かれ、必ず大きな反動が返ってくるのだ。その通りになった。岡田が利口なようで滑稽なのは、すぐに根拠薄弱と分かる原理主義者であることだ。自分のいいように原理・原則を組み立て、それを臆面もなく、とうとうとと展開する。5日のNHKでも、鳩山の菅に対する「身をお捨て願う」という発言について、「身を捨てて、しっかりやれという意味もある」と詭弁を弄しているが、あきれてものが言えぬ。「辞めよ」という会談で、誰が「身を捨てて頑張れ」というか。「馬鹿も休み休み言え」と言いたい。そして露呈した菅の「人間失格」だ。一般大衆はなぜ永田町の政治家が、菅を批判するかが理解できず、批判する側を批判する風潮があった。だが、今回ばかりはようやく、日本という大国がとんでもないリーダーに率いられていることが分かったはずだ。すぐに辞めるふりをして不信任案から逃れ、逃れきったと見るや「一定のめど」とは「原子炉の冷温停止の1月」と前言を翻す男なのだ。
みんなの党・江田憲司が「情けなさを通り越して、悲しい」と述べたが、もはや一国の首相の人間性の問題なのだ。その執念は自らが冷温停止となるまで続きそうだ。江戸時代の「当てにできないもの」の例えに「鍛冶屋の明日に、紺屋のあさって」があるが、現代は「首相の一定のめど」が当てはまる。「一定のめど」は流行語大賞だ。一般国民にも「菅が国難」がようやく分かってきたはずだ。一方、マスコミの問題点を挙げるなら、菅支持路線を突っ走って世論をリードした揚げ句、音よりも速く退陣論に転じた朝日新聞の無責任さだ。マスコミの論調には、“高度の論理”を展開する朝日新聞のそれと、視聴率確保のために大衆にこびて俗論を展開するみのもんたのそれが、両極端としてある。今回の「菅降ろし」の場合「こんな時に菅降ろしなど・・」という論点でぴたり一致していた。みのもんたに至っては、近頃は司会者の立場を忘れて延々と不愉快な演説をするようになった。莫大(ばくだい)な月収のもんたが、一般大衆を装っても説得力がないにもかかわらず、朝から晩まで「こんな時」論を展開した。我が友人の間では「もんたに洗脳されたくない」という反発が出ている。
朝日は朝日で、不偏不党の社是があるにもかかわらず、社説で菅支持を明確にし、編集委員・星浩が何度「菅降ろし失速」と意図的な記事を書いたことか。そして菅の「政局詐欺事件」である。朝日は直前まで菅支持だった。6月2日の社説で不信任案を「無責任にもほどがある」と野党を批判したが、同日の不信任案否決のごたごたの後、3日には、恥ずかしげもなく社説で「辞任はやむなし」との中見出しを取って、「菅首相の判断はこの際、やむをえなかったと考える」と辞任を肯定するという変貌ぶりだ。主筆・若宮啓文も一面で「首相は潔くあれ」と辞任を促した。「菅政権支持」が一転「辞めよ」である。まあ、この論調の無責任・無節操ぶりにはあっけにとられるとしか言いようがない。発行部数が減る一方なのも分かる気がする。菅も頼みの朝日に見捨てられるようでは進退窮まった。
今後の「政局梅雨の陣」の展開だが、菅は「1月退陣」で批判の大合唱に遭遇して、ようやく退陣時期を夏までと譲歩したが、菅のもくろむ8~9月退陣では、それこそ日本が重大な国難に遭遇することになる。なぜなら重要課題が3~4か月の間に山積しているからだ。とても退陣を口にしたレームダックの首相の力量でこなせるものではない。まず最重要の大震災・原発対策は、官僚が菅を見限り、次をにらんで積極的には動かない。赤字国債発行に不可欠な特例公債法案は、民主党内の喉に刺さった棘である子ども手当など「4K」の是非と密接に絡む。第2次補正予算案はその財源の規模から言って「税と社会保障の一体改革」つまり消費税導入と連動する。「一政権一仕事」は竹下登の言葉だが、その大仕事を3つも4つも、もはや息絶え絶えの菅が請け負って貰っても困るのだ。レームダックの首相が2次補正を作って、国会審議に臨み、成立させて責任を担保できるのか。菅は与野党が合意している復興基本法案が来週にも成立するのを機に、潔く退陣すべきだ。辛うじて野垂れ死にを避け、将来に時限大連立など政治の展望を開こうとする良心があるのなら、月内退陣しかない。
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