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2011-06-03 00:00
なぜ中国は民主化しないのか
岡崎研究所
シンクタンク
米 AEI の4月26日付けのウェブサイトで同研究所の Dan Blumenthal が「中国が民主化しないのは、中国が本当の資本主義ではないからだ」と論じています。すなわち、「米国は、中国が資本主義になり、その後民主主義になることを前提にしてきたが、中国には民主主義はない。中国の制度を『国家』資本主義あるいは『権威主義的』資本主義という人もいるが、中国は権威主義的ではあっても、資本主義ではない。なぜなら、資本主義は市民に、(1)豊かになる機会と、(2)財産権の保障、自由な活動、身分ではなく創意と工夫による報酬を受けることを含む最大の個人的自由を与えると共に、(3)同情心、寛大さ、自立、自制などの公的な美徳を推進するものであり、これらはすべて政治的自由や民主主義制につながる。ところが、中国の場合、(1)は提供されているが、(2)も(3)も与えられていない。資本主義は、市民に自己改善と自立を(自己規制や同情心という美徳で制約しつつ)許すものであり、資本家は民主化過程で国家の不正や略奪に対抗してきた。しかし、中国では、企業家は国家に依存するか、国家から特権を与えられる存在であり、民主化を求める『階級』は出現していない。従って、民主主義は形成されそうにない。中国共産党は、市場原則を一部取り入れ、経済成長に成功して、物質的利益を与えることで国民の多くを買収してきたが、多くの中国人にとって、この社会契約は不満なものになっている。改革がないと、中国は単に繁栄する独裁制にとどまるだろう」と言っています。
「中国がなぜ民主化しないのか」は検討に値する問題です。ブルーメンソールの指摘は、それについての一つの試論であり、ブルーメンソールは、何が資本主義であるかについて特定の考え方を持ってきて、今の中国はそこから外れているから、民主化が起きないのだと説明しています。しかし、なぜ中国が彼の言う資本主義から外れているのかの説明はありません。ただ、「経済成長に伴って中国が近い将来民主化する」という幻想を排除するには、役立つ論説です。
共産党支配の維持を最優先に考えている中国共産党が、どういう理論で自らの統治を正統化しているのかは、よくわかりません。民族主義的願望の実現や経済成長を共産党の正統性の根拠とするのは、理論的にはよくわからない議論ですし、過去の実績に正統性を求めるのは、大躍進や文化大革命など酷いものが多くて、無理でしょう。現実には、今の中国共産党は、安定の保持を強調して、権力維持を目指している感があります。要するに、中国共産党は権力にしがみつくことを自己目的化した集団のようであり、だからこそ民主化に危険を感じて、弾圧に狂奔している一方、国民の方はこれまでと比較して生活水準が上がっているので、共産党支配を容認している、ということではないかと思われます。
共産党のこの権力維持指向と国民によるその容認は微妙な均衡を保っており、脆弱ではありますが、権力層が権力にしつこくしがみつくのはよくあることであり、そう簡単には変わらないと見てよいようです。ただ、法治もなく、知的所有権も保護されないところで、イノベーションは起きませんから、中国の発展にとって共産党独裁が邪魔になる時が、いつかは来るのではないかと思われます。
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