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2011-05-23 00:00
メルト・ダウンの公表は、遅らせてよかった
若林 洋介
学習塾経営
危機管理の問題として「メルトダウン(炉心溶融)をもっと早く公表すべきであった」という論調が多いが、果たしてそうであろうか。国民がパニックに陥ることを危惧した政府が、確実な情報だけを流して、たとえ高い可能性があったとしても「メルトダウン」については、公表しなかったことは、正しい判断であったと思う。その根拠は「メルト・ダウン」という言葉が、国民心理に与える影響があまりにも大きいからである。たとえば、西岡参議院議長は、3月13日、産経新聞に「炉心融解すれば《原爆が落ちたのと同じような状態》になる」と発言している。
これは三流週刊誌ではなく、産経新聞という大手新聞に掲載されているのだから、その影響力も大きい。3月13日段階で、このようなレベルでの国民的理解度なら、国民がパニックを起こすことは、必至であったに違いない。
現状(5月中旬)において、「メルトダウン」が公表されても、パニックが起きないのは、「メルトダウン」が起きた後の被害状況がどの程度で済むのか、についての学習ができているからである。西岡議長の発言に対して、産経新聞編集部が何の疑問もなく、掲載していたことから見ても、一般国民のレベルにおける反応は予測できるというものだ。新聞社の編集部の知的レベルは、一般国民よりはるかに高いはずであるが、この西岡発言がもたらす危険性に全く気づいていないのだから。
特に東京という首都圏においてパニック状況が一部でも起きれば、国際的風評被害の甚大さは、現在の比ではないだろう。つまり、一部の東京都民が、首都圏外へ避難行動をとるとか、買占めが起こるとかである。それがまた海外に報道されて、風評被害はさらに拡大されたことになる。以上のことから考えても、メルトダウンを早期に情報公開しなかったことは、正解であったと思う。
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