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2011-05-20 00:00
求められる米国の対アジア政策のリセット
岡崎研究所
シンクタンク
インドの“Business Standard”紙のウェブサイト4月4日付で、Evan Feigenbaum 中央アジア・南アジア担当国務省次官補代理が「アジアでは再統合の動きが始まっており、米国がアジアで重要な当事者であり続けたいのなら、アジアの変化に合わせて政策や機構を変える必要がある」と論じています。すなわち、「アジアでは、(1)中国の台頭によりパワーの組み換えが行われており、また、(2)特に経済・金融関係では重心が「アジア・太平洋」から「大陸アジア」へと移りつつある。さらに、(3)アジア諸国間では、二国間FTAや、ASEAN+3(日中韓)等、米国が関与しない枠組みが続々と生まれている。そのため、米国は東アジアでは枢要なバランス要因として残るだろうが、経済面では中国が同地域の主要国の経済成長を支える存在となり、米国の役割は公共財(海洋航行の自由、自由市場等)をただで提供する、マージナルなものになりかねない。そこで、米国は、対東アジア外交においてはインドと、対南アジア・中央アジア外交においては日本、韓国と、対南アジア外交においては中国ともっと協働していくべきだ。特に、インドを米国の対東アジア政策の中に取り込むことが重要だ。また、米国はこれまでアジアを東アジア、南アジア、中央アジアに分けて捉え、それぞればらばらの外交を行ってきたが、今後は外交機構も変えていく必要がある」と言っています。
現在ワシントンでは、G2論的な中国への過度の期待は影を潜め、さりとて敵対論一本槍でもない、engagement and hedging 的アプローチが主流になってきており、hedgingについては日米同盟を主軸に韓国、豪州、インド、ASEAN等を引きいれた「何らかの集団的アレンジメント」が模索されています。ファイエンバウムの論評もそうした文脈に立つ試論の一つと言えるでしょう。
そして確かに、中国、そしてロシアに対するカウンター・バランスを大陸に構築していく必要性があることは、ファイゲンバウムの言うとおりであり、それは米国よりも、むしろ日本にとって必要な課題でしょう。海千山千の諸国が揃う大陸は、融通無碍な外交が不得手な日本にとっては、本格的な関与に適さない地域ですが、それなりのプレゼンスを維持して、地域の諸国から「選択肢」の一つとして時には頼りにされる存在であり続けることで十分だと思われます。
ただ、全体に賛成できる論説ですが、問題もあり、それは、「中国経済がアジア主要国の経済成長を支えることになる」と言っていることです。これは中国経済を大きく支えているのは、実は対米輸出であることを見過ごしている主張であり、米国はアジアで「影が薄くなる」どころか、政治的・経済的・軍事的にアジアの最重要のパワーであることを認識する必要があるでしょう。
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