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2011-05-19 00:00
昨日のままの経営者と労働組合では、独立行政法人は機能しない
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
独立行政法人という制度発足の経緯は、ご承知の通りである。タテマエはともかく、心は、「お役所組織から分離独立することによって、より自由度高く、かつ能率的に仕事ができるだろう」、もっとはっきり言えば、「コスト削減、赤字削減がやりやすくもなろうし、何より赤字垂れ流しの責任を『経営主体』という名の下に、誰かさんから誰かさんに転嫁できる」という目論みもないではなかった。
それに対して、これまでのお役所の「監督権」という制度設計では、「都合の良い時だけ口を出し」、さらには「天下り先としてのうまい汁がそのまま」だったことは、先の事業仕分けで明らかにされた通りだ。とはいえ、「やりようによっては、確かに効率的に仕事を進めることもできよう」という仕組みであることは確かだから、「何もそんなにシニカルに捉えるだけが能ではない」のも事実ではあった。
「仕組みが出来さえすれば、期待された成果は自ずからついてくる」という典型的なお役人の発想が「どっこいそうはゆかない」のは、当然といえば当然だ。仕組みを運用するヒトのほうが、仕組みに伴って変わるという保証はないからだ。というよりも、「仕事のやり方、運び方を変革したくて、じりじりしていたのが、仕組みが変わって、堰を切ったように改革案が目白押し」というのならともかく、「昨日は良かったから、今日もまた昨日の通りでよい。今日も無事平穏だったから、明日も今日の通りでよい」というエトスに、どっぷり浸かったままの経営者と、仕事をしないことが労働運動の目的になり果てている官公労の申し子の労働組合が向き合っていれば、結果がどうなるかは「三歳の童子でも分かる」みたいな話だ。
「それでも帳尻を合わせなくてはならないとすれば、どこで合わせるか」は、これまた想像に難くない。サービスのレベルダウンという形で、利用者がツケを払うことになる。もちろん競争相手がいれば、そんなことにはならないのだが、ほとんどの場合、「独占」とは言わないまでも「無競争」に近いのが実態であってみれば、何が起こるかは最近の電力会社の例を見れば、一目瞭然だろう。とまあ、電力会社については書き出したらキリがなさそうだから止めにしておくとして、見聞録よりは一般論で終わってしまいそうだ。この稿続く、ということにしておこう。
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