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2011-05-09 00:00
連休明け政界、百鬼夜行の局面へ
杉浦 正章
政治評論家
連休中の政界とマスコミの動きを分析すると、政界は、「菅降ろし」を遠巻きにして、連休明けからじわじわとその輪を狭めようとしている。菅直人は、しがみついた首相の座を死んでも離さない姿勢。一方、全国紙は、菅政権支持の方針を鮮明にさせた朝日が、全ての政治報道を「菅降ろし失速」のトーンで統一。逆に産経は、全ての政治現象を「菅降ろし過熱」といった表現で、何が何でも倒閣につなげようとしている。いずれも、不偏不党の標榜とはほど遠いありさまだが、現実に紛れもなく存在する政治の動きを、あえて無視しようとしている朝日の報道には、公正さの問題がある。新聞紙面がこれほど割れたことは珍しい。朝日が「倒閣失速」と書いた5月3日に、読売は「菅降ろし、駆け引き本格化」である。政局の読みが真っ向から対立した紙面だ。しかし、その前の4月26日付けの社説で朝日は「菅おろしの余裕はない」と菅政権支持を打ち出しており、この編集方針に統一された意図的な記事だといえよう。朝日はまさに「菅降ろし反対」をキャンペーンにしており、4日の社説でも「政争やめるにしかず」で追い打ちを掛け、7日付紙面では編集委員・星浩が再び「菅降ろし失速」と駄目押しをした。
ところが6日には、小沢の注目すべき発言があった。内閣不信任案が提出された場合の対応について、「今、そんなことを考えるわけではない」としながらも、菅の東日本大震災、福島第1原発事故への対応を「手をこまねいていて済む問題ではない。『政府の対応は、このままではいけない』という声を強くしていきたい」と述べたのだ。この発言を、読売が「小沢氏『声大きくしていく』、政権批判強化へ」、日経が「小沢元代表、表立った首相批判を開始」、産経が「首相退陣論の広がりに期待、菅政権を重ねて批判」と、いずれも菅降ろしへの前向き姿勢ととらえた。しかし、朝日のみが「小沢氏、政権見守る考え、不信任案『今は考えていない』」と、あたかも菅降ろしを断念したかのような掌握の仕方だ。
事実や政治家の意図をねじ曲げても、「ここは菅降ろしをつぶそう」という魂胆が、ありありと見える紙面構成だ。朝日だけを取っている一般読者は「そうか」と思わざるを得ない巧妙な紙面でもある。しかし、実際に菅降ろしは失速しているのだろうか。「失速」とは「飛行機が飛びたったあと、操縦の自由を失って危機的状態に陥る」ことを意味するが、実態は逆だ。菅包囲網はじわりと狭まっている。朝日は、1次補正成立を失速の原因に挙げる、という決定的な間違いをしている。1次補正は緊急災害対策であり、野党も反対は不可能であった。問題は、巨額な財源を必要とする第2次補正をめぐる思惑や赤字国債発行法案など、予算関連法案がひしめいている「会期末までを見通しているか」ということだ。普通の政局判断があれば、菅降ろしは「まだこれからである」ことが判るはずだ。
もっとも菅降ろしをする側も、与野党共に調整すべき課題はある。まず民主党内だが、小沢と鳩山由紀夫の間に取り組み方の齟齬(そご)がある。小沢は「野党の不信任案に乗ってもよい」構え、つまり「党分裂も辞さない」構えだが、鳩山は違う。鳩山は「党分裂を来さない菅降ろし」が基本だ。野党は公明党が“よい子”になろうとして、「大震災無視の政変」に躊躇しているのが気がかりだが、代表・山口那津男の物言いから見て、菅を見限っていることは確かだ。自民党内は、大連立を視野に入れた場合「小沢と組めるか、どうか」が焦点だ。元首相・安倍晋三らは「小沢と組んでもいい」という姿勢だ。つまり倒閣で連立だ。逆に古賀誠らは「菅で連立も辞さない」構えだ。つまり現政権を母体にした連立だ。一方で、連立自体に反対する党内勢力もある。統括すべき総裁・谷垣禎一は倒閣発言にふみきったものの、持ち前の優柔不断さが災いして、党内の意見を集約する「行動としての倒閣」に踏み切れないでいる。
こうした攻める側の思惑の乱れが、一つの動きとして収れんされていくまでには、時間を必要とする。しかし、菅が逃げ込もうとする通常国会会期末6月22日までの1か月半は、まさに百鬼夜行の政局が現出するだろう。大震災への対応の緊急性から言っても、会期延長は当然すべきであろう。とても早々と「菅降ろし失速」などと断言できる情勢ではあるまい。だいいち飛ばないうちから失速するわけがない。菅は「浜岡原発の停止要請」など、一時しのぎのパフォーマンスで乗り切ろうとしているが、例によってあまりにも唐突で、根底には保身の思惑がありありである。やっと及ぼす問題の深刻さに気付いたか、急きょ政権は、菅も、官房副長官・仙谷由人も、8日「原発停止は浜岡のみに絞る」ことを表明。新エネルギーが代替エネルギー源になり得ない状況下においては当然だ。これでは支持率が若干戻っても一過性だろう。
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