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2011-04-27 00:00
台湾が抱える対中政策のジレンマ
岡崎研究所
シンクタンク
3月31日付けの『ウォールストリート・ジャーナル』で、豪州のシンクタンク、Centre for Independent Studies の John Lee が、「経済協力枠組み協定(ECFA)によって中台の経済的統合が進む中で、台湾側は、中台交流による中国インテリの民主化を期待しているが、中国側の台湾併合の決意は非常に固く、台湾の期待通りにはならないだろう」と言っています。すなわち、「台湾の人々は、台湾に大きな経済的恩恵をもたらしている ECFA が中国側の餌だということをよく承知している。しかし、年間何百万人もの中国人が台湾に来て、言論、報道、ネットの自由を満喫するようになれば、中国の台湾に対する態度も軟化するのではないかと期待している、しかし、中国側の戦略の基本は第一列島線を我が物にすることであり、事実上の支配だけでは満足しない。また、中国のエリートは、中国共産党支配体制の受益者であり、中国共産党の歴史的解釈の信奉者でもある。その上、もはや毛沢東やトウ小平のようなカリスマ的リーダーがいなくなった中国は、台湾問題について既存のコンセンサスだけで動き、柔軟な姿勢はとれなくなっている。つまり、台湾は、経済統合は不可避と思いつつも、台湾の政治制度の優越を信じているが、北京にはその存続を許す気は無い」と言っています。
中台の経済統合が不可逆的な勢いで進展していることに対して危惧の念を表明している論説ですが、その危惧の念には、同感すると同時に、論説よりは楽観的な見方をしてもよいように思われます。
将来の中台政治的統合に対する唯一の歯止めが、論説が言うように、中台の交流の拡大による中国本土の民主化であるならば、確かに悲観的にならざるを得ません。しかし、根本的には経済問題が政治問題を動かすことはなく、それは第一次大戦前に「欧州各国間の経済依存度の深化で戦争はなくなった」と予言したノーマン・エンジェルの誤りを見てもわかります。自由民主を謳歌する台湾の人々が、経済関係断絶の脅しによって、共産党一党支配の中国の支配下に入るとも思えません。結局、経済不況も、天災も、政治とは別個の次元の現象です。
「経済協力協定の次は、政治協定」と言うのは、国民党政権成立当時の公約ですが、この任期中には果たせそうもありません。理由は簡単で、政治協定は国民が支持しないので、次の選挙に不利になるからです。この民主主義の制約が働くとすれば、中国が共産党支配であるかぎり、台湾との政治的統一はあり得ないことになります。他方、武力または武力の脅威による統一は、米国との戦争を冒すことになります。従って、米国が台湾に対する武力の行使および脅迫に断固反対している限り、台湾の民主主義は護られると思われます。
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