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2011-04-26 00:00
菅の進退は、連休後速戦即決で一挙に勝負か
杉浦 正章
政治評論家
落語で一度握ったものを絶対離さないケチな人を「六日知らず」という。日数を数えるとき、五日までは指を折るが、六日からは折った指を開かなければならない。この人は、一度握った手は決して開かないのだ。かねてから首相・菅直人の執念深さは並大抵ではないと思っていたが、国会答弁で大震災の時に首相になったのは「運命」と述べたのには驚いた。こりゃ並大抵では辞めまい。だから「六日知らず」を辞めさせるには、不信任案か、問責決議案の上程しかないのだ。民主党内で今流行しているのは「垂範辞任」と「身代わり辞任」だ。「垂範辞任」しているのは「統一地方選での敗北」を理由に県連代表を辞任している議員ら。中間派の樽床元国対委員長が大阪府連代表を辞任する意向を示したのに続き、熊本、神奈川の県連会長も辞意を表明。垂範して辞任することにより、選挙責任をまったくとらない執行部に圧力を掛けているのだ。一方「身代わり辞任」しようとしたのは党選対委員長石井一。石井は、党県連代表の辞任が相次いでいることを受け、「自分で当て馬になるという意思を示す必要がある」と述べ、首相や幹事長の「身代わり辞任」をしようとした。「自分に波及してはかなわない」とみた幹事長・岡田克也に説得されて、すぐ取り下げたところを見ると、相変わらずの見え透いた格好づけであった。
普通の感覚なら、「心ある」首相や幹事長たるもの辞めて当然だが、「心がない」(片山虎之助)から辞めないのだ。 参院予算委で述べたように、菅は「私が総理大臣の立場にいたのは、ひとつの運命だ」から辞められないというのだ。そのうちに、「首相でいるのは天の配剤」と言い出さないか、心配だ。福田赳夫も「福田再選は天の声」と宣言して、総裁選で大平正芳に敗れ、「天の声にも変な声がある」と照れ隠しを言ったが、菅は似ている。かって田中角栄が「官邸の首相の椅子に座って一年たつと、狐が憑いたようになって、自分が天地逆さまに座っていても、分からなくなる」と冷静な分析をしていたが、菅は狐が憑いても分からないところに、「菅降ろし」の原点があるのだ。 おまけにこれを助長する大新聞がある。このところ朝日新聞から政局原稿らしい政局原稿が消えたが、4月26日付けの朝刊も、自民党や民主党に大きな動きがあっても、それを政局としてとらえていない。得意分野であるはずの政治記事の扱いが意識的に小さい。
「なぜか」といぶかしかったが、同日付けの社説を見て分かった。「菅おろしの余裕はない」が編集方針なのだ。「自分たちが選んだリーダーである。欠けている点は補い、一致して当面の危機対応に当たるのが政権党の筋目だろう」と続く。端的に言えば、朝日さんは、国難首相に目をつむっても、自民党政権に戻るよりはいい、のだろうと筆者は思う。せっかく民主党政権を作ったのだから、朝日さんは引き延ばしたいのだろう、とも思う。たとえ「菅発の危機」が予見されてもである。これでは朝日の政治記者は、退社して、読売に入った方がいいのではないか。しかし、菅や朝日には悪いが、政局は逆に動いている。四面楚歌である。党内と野党から「辞めよ」のシュプレヒコールである。
「宇宙戦艦(菅)・ナオト」はブラックホールの重力圏にとらえられた。もはや逃れるすべはない。最初は緩やかであるが、終いには光速に近いスピードで吸い込まれるのだ。5月2日に第1次補正予算が成立するから、それから「菅の巻き狩り猟」が本格化する。「菅降ろし」で事実上一致した4月25日の自・公国対委員長会談で、普段は物言いがおとなしい公明党国対委員長の漆原良夫が「復旧にメドがついたら、お引き取りを頂く」と、ドスの利いた発言をしたのには驚いた。当面、自・公両党は、民主党両院議員総会での小沢軍団による「党代表解任決議案」の成否と、その場合における菅の進退を見る、ということだろう。それでも辞めなければ、副総裁・大島理森が「問責決議案や不信任案の提出を考えなければならない局面が来るかもしれない」と述べた動きへと発展させるのだろう。朝日がご心配なように「菅降ろしの余裕はない」ので、連休後に速戦即決で一挙に勝負を付ける流れになるだろう。
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