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2011-04-07 00:00
対中牽制のためのロシアの対日接近はあるか?
岡崎研究所
シンクタンク
『ウォールストリート・ジャーナル』紙の3月2日付で、米AEIの Michael Auslin が「ロシアは中国を恐れているのだから、日露両国は、二国間問題を適切に処理しつつ、中国からの挑戦に対し、共同で対処すべきだ」と論じています。すなわち、「昨年のメドベージェフ大統領による千島列島訪問や、ロシア国防省による千島列島への軍事視察旅行、さらに、ロシア海軍が太平洋側に活動の中心を移し、多数の潜水艦と水上艦を増やそうとしていることなど、現在ロシアには、20年ぶりでアジアでのプレゼンスを誇示しようとする動きが見られるが、ロシアの真の狙いは、伝統的な敵対国である中国のアジア地域における政治的、経済的勢力拡大に対処することにある。特に、人口の少ないロシア領シベリア極東地域が、大量の原料や資源を求める軍事大国中国にとって益々魅力的な場所となるだろうことは、中ロ両国が認識しており、将来的には中国政府がこの地域の領有権を望むようになる可能性もある」と指摘し、「日露両国は、二国間関係で新たな危機が生じないようにしつつ、両国が直面する中国からの安全保障上の挑戦に対処する方策を共同で検討すべきだ」と提言しています。
日ロ共同の「対中国対処論」です。最近のロシアの一連の動きを「対日牽制」ではなく、「対中戦略」の始まりと見るもので、その具体的根拠は示していませんが、ロシアの動きを対中政策の一部と断定する論調は小気味よく、新鮮ですらあります。
問題は、このオースリンの見立てが本当に正しいかどうかでしょう。確かに、1972年、米国が対ソ連戦略の一環として中国との国交正常化に踏み切った例がありますし、ロシアが最近の中国の覇権主義的動きを苦々しく思っているだろうことも想像に難くありません。しかし、ロシアにとって現在の中国が、「対日関係改善」という犠牲を払ってでも対処しなければならないほどの脅威であるかどうかは議論が分かれるでしょう。ロシアにとって、中国とは当面「是々非々で、相互に利用し合う」戦術的な関係を維持する方が得策のようにも思えます。
また、日本でも中国が自己主張を強めていることへの懸念が高まっていることは事実ですが、「対ロシア譲歩」をしなければならないほど、対中危機感が強まっているとは思えません。他方、中国側も、オースリンのような議論が米国や日本から出てくることを最も警戒しているはずです。この論説に意味があるとすれば、考慮に値する中長期的な政策オプションを示したことでしょうが、近未来の政策として実現の可能性はほとんどないように思われます。少なくとも、オースリンが主張するような方向で対露外交を戦略的に判断できる政治家が、日本にいないのは確かでしょう。
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