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2011-03-02 00:00
とどめは首相問責決議しかあるまい
杉浦 正章
政治評論家
裏切られた揚げ句の“大甘処分”で、幹事長・岡田克也が「若い議員を育てる観点も含めた」と述べたのは、噴飯ものだ。大のおとなに言う言葉ではない。小沢別動隊の予算本会議欠席への処分は、首相・菅直人以下執行部のリーダーシップの欠如を露呈させた。菅は崖っぷちの松に辛うじてぶら下がっている形だが、その執念は異常であり、自ら手を離すことなどあり得ない。首相を辞めさせることは容易ではないが、唯一の方法は参院での問責決議案可決だ。憲法上の強制力はないが、可決されればすべての首相、閣僚が辞任に追い込まれている。焦点は、自公両党がどのタイミングで踏み切るかにかかっている。とにかく政党組織としての規律など、どこかへ吹き飛んだ。公然と政権を批判し、会派離脱届けを提出し、議員として最重要案件の予算本会議を欠席して、小沢一郎の権力闘争に手を貸している議員らを、執行部はまだ手なずけようとしているのだろうか。
「私は、菅さんを処分したい」(高松和夫)とうそぶく議員ら15人を事実上おとがめなしの「厳重注意」、首謀者一人だけをもっとも軽い党員資格停止処分では、御政道が成り立つまい。リーダー格の渡辺浩一郎は記者会見で「小沢一郎元代表に対する党執行部の対応に反対するために行動したのではない」と、小沢との関わり合いを否定したが、これを「いけしゃあしゃあ」という。尻が割れているのだ。毎日新聞によると、造反議員の一人が国対幹部に涙声の電話で「神の声があれば、出る」と述べたというのだ。神の声とは「小沢の指示」に他ならない。小沢は16人を別動隊として、政権揺さぶりの波状攻撃に“利用”しているのであり、いったん打った王手飛車取りの“奇策”を覆すわけがないのだ。それにしても小沢も、自分を「神格化」させるまでに至ったとは、恐れ入る。こうして予算案は財源の裏付けのないまま参院に移ったが、辞めない首相を総辞職か解散に追い込む方法は、冒頭述べた問責決議可決しかない。
衆院での不信任案可決は、小沢が参加しなければあり得ないからだ。そこを見据えて自民党幹事長・石原伸晃は3月1日「民主党の矛盾点を追い詰め、きたるタイミングで問責決議案が提出されることになるのではないか」と、首相問責決議案を提出する方針を鮮明にさせた。問責決議は過去5例の可決がすべて辞任に結びついている。防衛庁長官・額賀福志郎は可決後1か月で辞任。首相・福田康夫は3か月後、首相・麻生太郎は2か月後、官房長官・仙谷由人と国交相馬淵澄夫は2か月後に、それぞれ辞任に至っている。衆院解散が首相のもつ「伝家の宝刀」なら、ねじれ国会における野党の「伝家の宝刀は」いまや問責決議可決となったのだ。首相を辞任に至らす前例は、野党時代に攻撃の先頭に立った菅自らが作ったものであり、今回も可決されれば、辞任か、やぶれかぶれの解散しか選択肢はないだろう。参院の審議がすべてストップしては、進退は谷(きわ)まるしかない。
問題はそのタイミングだ。提出する時期を誤れば、元も子もなくなる。自民党としてはまず統一地方選挙前を狙うだろう。参院予算委審議で菅政権の体たらくを暴き、できれば内閣支持率を10%台から一ケタ台に落とす。小沢の「菅降ろし」の波状攻撃は続くだろうから、心理的にも、物理的にも、菅は追い込まれる。そのうちに衆院だけでなく、一枚岩とされる参院民主党でも「造反」が出てくる可能性がある。自民党は、公明党が駄々をこねないようなだめすかし、少数政党の機嫌を損ねないようにして、提出へとこぎ着けねばならないから、時期設定はきわめて難しい。公明党も代表・山口那津男が地方統一選とのダブル選挙も辞さない姿勢をみせているものの、なお躊躇があり、働きかけ方は難しい。しかし、菅批判が盛り上がりを見せている現状を逸したら、次のチャンスがいつ来るとは限らない。政権交代で自公政権復活の甘い誘いが、公明党を落とす唯一の作戦だ。早ければ今月下旬が問責提出の最初のチャンスとなるのではないか。遅れると、統一地方選の最中か5月連休明けとなるが、鉄は熱いうちに打たないと、世論の矛先が野党に向かいかねない。
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