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2011-02-15 00:00
(連載)中東地域における米国の影響力の衰退(1)
溝渕 正季
日本国際フォーラム研究員補
2月11日、アラブ世界の大国エジプトにおいて、約30年にわたり大統領の座を独占し続けてきたホスニー・ムバーラク大統領が辞任に追い込まれ、軍の最高評議会にその権限が移譲された。この事件はエジプト現代史において確かに画期的なものではあるが、とはいえ、事態は一部メディアが報じるほど楽観的なものではない。現時点までに起きたことといえば、あくまで「経済的不満に端を発する民衆暴動」と「大統領の失脚」に過ぎず、未だに与党国民民主党(NDP)が議席を独占し、伝統的な既得権益層が権力を独占している状況に変わりはない。
また、戒厳令を初めとする非民主的な制度や構造が改正される保証もない。それゆえ、現状をもって「民主化が始まった」とすることは明らかに時期尚早であり、今後の展開は依然として不透明であり、予断を許さない。とはいえ、今回の一連の政変で明らかになったことが一つある。それは、中東地域において米国の影響力が明らかに衰退傾向にある、という事実である。言うまでもなく、エジプトのムバーラク政権は、中東随一の、否、世界的に見ても有数の親米政権である。米国はイスラエルとの和平協定を結んだという理由だけで、腐敗と汚職にまみれ、民主主義や自由といった理念を足蹴にしてきた独裁政権に対し、年間13億ドルにも上る軍事援助を与え続けてきたのである。
少なくともアラブ人の目から見れば、米国は明らかに「反米の民主国家」よりも「親米の独裁国家」の方を好ましいと考えており、エジプト国民のムバーラク政権に対する抗議はそのまま、米国の外交・援助政策に内在する「ダブル・スタンダード」に対する抗議であったと言ってよいだろう。さらに、中東地域における米国の影響力の衰退は、ここ数週間はエジプトの政変の影に隠れてあまり多く報道されてはいないものの、近年のレバノンやイラクの情勢変化を見ても明らかだ。
レバノンでは1月12日より、レバノン特別法廷問題をめぐって、親米派のサアド・ハリーリー首相率いる挙国一致内閣から反米派のヒズブッラーとその支持勢力に属する閣僚11人が辞任し、内閣崩壊という危機に陥っている。さらに、この内閣崩壊劇が丁度、ワシントンにおいてハリーリー首相とバラク・オバマ大統領との会談中に起こったという事実は、ある意味で米国の影響力の衰退を象徴していた。そして1月25日、大統領によって首相候補に指名され、組閣を任されたのは、かねてよりヒズブッラーと蜜月関係にあるナジーブ・ミーカーティ氏であった。首相への返り咲きを目指していたハリーリー氏は、ミーカーティ氏が首相になる場合には自分は入閣しない旨を既に表明しており、仮にこのままミーカーティ内閣が誕生すれば、それは事実上の「ヒズブッラー政権」となるため、米国やイスラエルは懸念を深めている。(つづく)
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