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2011-02-14 00:00
政局の動向をシミュレーションする
杉浦 正章
政治評論家
今国会中6月までの「政局」、つまり解散・総選挙か、内閣総辞職かの可能性を聞かれれば、8対2で「可能性はある」と答えるしかないだろう。しかし、それが最短の「3月解散・4月選挙」や「4月退陣」かどうかは、5分5分とみるしかあるまい。たとえ4月の統一地方選挙に菅が逃げ込んでも、「惨敗」は必至であり、責任を問われての「のたれ死に総辞職」か「やぶれかぶれ解散」しか選択の余地はないように見える。これに小沢一郎の動きなどの不確定要素が絡むから一直線の展開とはなるまいが、「菅滅亡」はエジプト政局並みに確かであろう。シミュレーションをしてみる。
自民党副総裁・大島理森が「月曜日に民主党のしっかりとした答えがない限り、2011年度予算案採決の最低条件である中央公聴会の議決は拒否する」と発言、いよいよ国会は「論戦」の段階から「物理的抵抗」の段階に移行しつつある。民主党国対委員長・安住淳は、自公への予算修正働きかけと衆院再可決票確保のための社民党抱き込みの“二股膏薬”で、にっちもさっちもいかない状況となっている。最近では、法案ごとの個別撃破を狙っているが、自民党も公明党も些細な法案はともかく、天王山である赤字国債発行のための公債特例法案や子ども手当法案自体に反対であり、安住は見当をつけ間違っている。状況は、袋小路に追い込まれつつあり、これに小沢の処分と国会証人喚問が絡んでくるから、展開は複雑だ。
しかし、自公の強硬姿勢から言って、「3月危機」があらゆる動きの発火点となるのは必至である。問題は「3月危機」を発端とする導火線が短いか、長いかであろう。一時は内閣改造でわずかばかり息を吹き返した支持率も、共同通信の調査で19.9%と10%台にまで落ち込んだ。この流れは、今後各社の調査にも波及してゆくだろう。鳩山退陣の時と同レベルの支持率に入ったことになる。そこで通常国会末までの展開をシミュレーションすると、(1)3月解散・4月選挙、(2)激突のまま統一地方選挙にもつれ込む、(3)菅総辞職で新首相の下に政権継続、(4)菅総辞職・新首相の下で解散・総選挙、(5)菅政権継続の5通りが考えられる。
【3月解散・4月選挙】一番早い政局化である。自公の予算関連法案成立拒否で展望を開くことが困難と判断した菅が、解散・総選挙に打って出る形だ。統一地方選挙とダブルになるが、内閣、政党支持率から言って、総選挙も、地方選挙も、惨敗不可避の流れだろう。
【激突状態のまま統一地方選へ】予算は成立しても関連法案が成立しないまま、解散・総選挙も退陣もせずに地方選挙に突入する。地方選の惨敗は必至であり、党内から菅の責任を問う声がほうはいとして巻き起こり、菅は「のたれ死に型の退陣」か「やぶれかぶれ解散」に追い込まれる。
【菅総辞職・新首相で政権継続】菅が「もはや、これまで」と観念して、4、5月に退陣するケース。民主党は、後任には外相・前原誠司あたりを据えて政権基盤の再構築をはかる。朝日新聞など「解散・総選挙時期尚早」論を唱えている民主党支持のマスコミが、喜びそうなオプションだ。
【菅総辞職・新首相の下で解散・総選挙】事実上の与野党「話し合い解散」となろう。選挙前の小沢グループ分裂や選挙後の政界再編の可能性が一番強い選択だ。
【菅政権継続】可能性は一番低いが、通常国会を乗り切れれば、秋の臨時国会までは持つかも知れない。
このような5通りのシュミレーションが成り立つが、これには審議拒否も含めた自民党などの「解散」一辺倒の動きに、世論がどのような反応を見せるかが大きな作用を及ぼすだろう。「多少の政治的混乱を許容しても、国民の信を問うことを優先すべき」とする世論と「混乱を回避して早急に予算を成立させよ」という世論に、国論が2分することが予想される。しかし内閣支持率が10%台として定着する方向にあり、その意味するところは何かと言えば、根底に「国民の反省」があるような気がする。つまり、民主党政権にだまされたことへの反省である。戦後まれに見る公約欺瞞を見抜けなかったことへの反省でもある。これはとりもなおさず、「選挙で選択をし直したい」という願望の表れにもつながろう。公明党など世論調査で政治をする政党は、ますます反菅政権へと動くだろう。菅は新年早々「過去の総理には小泉さんのように長くやった人と比較的短くて辞めた人がいますが、その辞める原因というのが、なんとなくわかるんですよね」と前置きして、「気持ちが萎えるんです」と述べた。この菅の「萎える」発言から推察すれば、既に「萎えかかった」のを辛うじて持ち直しているという心の襞(ひだ)が浮かび上がってくる。「萎え」れば総辞職、「暴発」すれば「解散」となる流れが見えてくる。
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