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2011-02-03 00:00
(連載)世界から軽蔑されている日本の政治家たち(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
どの国にとっても、国家の主権問題でしっかりした座標軸を堅持することは、外交や安全保障の根本だ。そのような座標軸をしっかり有していない国は、国際社会でまともな扱いも受けないし、尊敬もされない。いや、そもそも外交や安全保障政策が成り立たない。日本はしばしば「エコノミック・アニマル」と軽蔑的に言われてきた。目先の経済的な利害のみで動く国、国家としての原理・原則を有さない国、という意味だ。あるいは、人権、民主主義、その他何らかの理想や普遍的な価値観などには無関心な国、という意味でもある。その日本が唯一、国家として筋を通してきたことがあるとすれば、それは北方領土問題であろう。ではそれを、ロシア側はどう見てきたか。
ロシアは日本に対して、北方領土問題は棚上げして、経済協力を進展させることを一貫して要求してきた。もちろん日本がそれに応じたら、ロシア側は大いに満足する。現に2009年5月、プーチン首相が訪日したとき、首脳会談では麻生首相は領土問題を取り上げたが、実際には主権問題を棚上げして、原子力協定を含む多くの経済協力の合意をした。もちろんロシア側は大いなる満足を示した。では、このような日本をロシアはどう見たか。果たして、敬意を抱いただろうか。その時のロシアのマスメディアは、「朝に領土問題を口にしながら、夕にはもう経済協力を求めている。領土返還要求は、単なる国内向けのポーズにすぎない」と嘲笑的なトーンで報じた。昨年11月にメドベージェフ大統領が横浜サミットの直前に国後島を訪問したときも、菅首相や仙石官房長官は遺憾の意や抗議の言葉を述べた。
しかし、ロシアのマスメディアは、日本政府が口では抗議しながらも、同時に、サミットの場での首脳会談を拒否するどころか、むしろその可能性を探っていることに、「興味」を示した。もちろん、国後島で「南クリル(北方領土)は今後もロシア領」と公言した直後に日本に乗り込むメドベージェフ大統領に、抗議すると思いきや、卑屈にもすり寄ってきたのには、呆れているのである。ロシア外務省のある日本通は、「最近の日本を見ていると、『日本人の精神年齢は12歳』と言ったマッカーサー元帥の言葉を思い出す」と述べた。では、ロシアの「政敵」であったはずの末次一郎氏がロシア側から大いなる敬意を表され、これに対して最近の日本政府がここまで見くびられているのは何故か。もはや説明は不要だろう。
今問われているのは、外交や安全保障の根幹である主権問題に対する日本国民および日本政府の意識と態度である。国際関係において日本政府がなすべきことは、たとえ一時的に相手に不快感を与えても、主張すべきことは明確に主張し、それを行動で表すということだ。また主張の真剣度は、そのためにそれだけ自ら経済的その他の「痛み」を覚悟するかによって示される。痛み、あるいは犠牲を払っても、主張すべきことは主張する。それこそが結果的に相手からの尊敬を得る道でもある。逆に、「気配り外交」の結果言うべきことも言わず、自ら何の犠牲も払わず、主張は単に口先のみで、行動が逆方向を向いているとき、相手は喜ぶかもしれない。しかし、相手からも国際的にも、日本は軽蔑されるだけである。(おわり)
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