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2011-01-10 00:00
ハンガリーの報道機関規制について思う
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
広島の秋葉市長が引退の記者会見を開かないでユーチューブだけにコメントをしたとか、国会やマスコミにはとんと無愛想な小沢一郎さんがニコニコの動画でだけは雄弁だとか、とかく選択的にメディアへの露出をなさる政治家が増えてきた。既成の新聞だの、テレビだのの報道姿勢が、いかがかと思われるのについては、同感の意を表明される方も多かろう。訳の分からないタレントもどきをアンカー・パーソンに据えてみたり、やたらおちゃらけてみたり、あげくの果ては景気の悪さもあるのだろうが、見境なしのスポンサー・オンパレードで宗教団体のコマーシャル迄登場するに至っては、テレビもテレビだと思う。新聞も、「小沢ぎり」なんていう大見出しを一面トップに据える品の悪さ、さらには老害を自主規制できない経営体質、「人が犬を噛まなければ」記事にならないのから一歩を進めて「噛んでみたらどうですか」みたいなあおりの姿勢さえ目立つ。だからといって、これを無視したり、ないほうが世のためになる、という風潮が支配的になると、これもまた困ったことになる。
中国は言うに及ばず、ロシアも、所詮民主主義とか報道の自由と言う体質は根付く筈もないのだろう。まあ、それが共産主義国というものだ、と醒めて見ていれば、ベラルーシュの選挙干渉や報道規制の現状も当然なのでしょうね。これらの国に民主主義が定着するのには、あと何年、何十年くらいかかるか、分かったものではない。共産主義国ではないが、ミャンマーでも自由な選挙とか言論の自由は存在しない。要するに、マスコミの資質とかあり方と一言でいっても、そこには画然としたレベルの差がある。ところが、旧中央ヨーロッパの民主化の優等生、自由な選挙制度がいち早く定着したはずのハンガリーでも、最近おかしくなっている、ということになると、いささか趣が異ってくる。
腐敗した社会党政権の後を受けて、国民投票で過半数、議席数では憲法改正に必要な三分の二を獲得したヴィクター・オルバン率いる右派政党フィデシュは、先に社会党に追われて野に下ったときに、極めて冷たいあしらいを受けたマスコミに対して、強い不信感を持ったこともあって、強い規制的態度で報道機関に臨んでいる。その一つが、言論統制機関としての「メディア・カウンシル」の創設で、この機関は「バランスを欠いた」あるいは「人間の尊厳」を損なうような報道には禁止的懲罰を加える権限を有する。これには国内において高名なピアニストのアンドラーシュ・シフを始めとする文化人から異議が申し立てられているほか、西欧メディアも攻撃の砲列をひいている。回り持ちのEU議長国が今年ハンガリーになることもあって、その「適格性を問う」という論調まで見られる。意に添わないメディアはショートカットして相手にしないというのは、洋の東西を問わず、政治家が陥りがちな誘惑のようだ。
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