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2010-12-21 00:00
台湾をめぐる中台バランスの危機増大
岡崎研究所
シンクタンク
11月16日付けの『ウォールストリート・ジャーナル』紙で、J. Michael Cole 『台北タイムズ』副編集長が、「中台の経済関係の深化にも関わらず、台湾の独立志向が衰えていないことから、中国が武力行使に踏み切る可能性が出てきた中で、台湾の防衛能力が落ちている」と警告を発しています。すなわち、「中国は、台湾が国民党政権になって、経済協力協定も結ばれたことから、将来の中台統一への道が開けた、と期待を持ったかもしれないが、台湾ではかえって独立志向が増えている。チベットの例に見られるように、経済による懐柔は成功しない。台湾のナショナリズムを理解していない中国も、いざ台湾との政治協定を推進しようという時には、それに気づき、そうなると武力行使しかないと考える可能性がある。ところが、台湾の防衛力は危険なほど脆弱で、数年内には自衛できなくなるだろう。それでもなお独立志向が続けば、中国は軍事的優勢を背景に非正規戦闘を仕掛けて来るかも知れない。こうした危機を避けるために、米国と台湾は台湾のアイデンティティーを維持するに足る十分な防衛力を整備すべきだ」と言っています。
台湾の国内状況の推移についての、この論説の判断は頷けます。2008年の総選挙で国民党が勝った時は、日台関係の悪化、中台関係の急進展、台湾政府による受容を前提としての中国の武力行使など、種々の危機的シナリオが危惧され、オリンピック後の危機説も囁かれました。
しかし、2年余りが過ぎ、オリンピックや万博が終わっても、大きな動きは起きず、また経済協力協定が出来ても、台湾国民はそれに呑みこまれることはなく、世論調査ではむしろ独立志向が増えて、国民党の公約である中台平和協定に進む見通しは、ほとんどなくなっています。論説は、こうした状況に直面した中国は、武力行使に踏み切り、それは非正規戦闘の形を取るだろうと予測し、そうした状況において米台は弱体化した軍事バランスの回復を図るべきだ、と論じているわけです。たしかに、東シナ海における軍事バランスの変化は国際情勢に影響を及ぼしています。尖閣付近でも、ほんの10年前は自衛隊の戦力だけで中国の海空軍力に対峙できましたが、今は中国の方が優勢ではないかと推測されますし、中台の軍事バランスも既に逆転しています。米日共にいずれはこの問題に直面せざるを得ないでしょう。
ただ、台湾情勢については、中国は、国民党政権の時が好機と知りつつ、結局は、現状では米国との武力衝突の危険を冒すだけの実力はないことを認識しているのではないかとも思われます。それが正しいとすれば、台湾情勢は今しばらく民主主義の成り行きに任せる余裕があるように思われます。現に、馬政権は、経済済協力協定までは良くても、平和協定にまで進むことに、国民の大部分は反対であり、次の選挙で得票に結びつかないことも覚っているようです。そうであるなら、米国は、中国による武力行使に対して、台湾を防衛する断固たる姿勢を示し、台湾の将来は台湾の民意が民主主義的に決めることを保証していけばよいことになります。また、米国の台湾政策として、今はそれ以外に選択肢はないように思われます。
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