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2010-12-17 00:00
捕鯨問題で日豪関係を壊してよいのか
中山 太郎
研究所客員研究員
12月16日、都内某所で豪野党党首トニー・アボット氏の話を拝聴した。同氏は、政治では自由主義、経済では市場競争原理の信奉者でもある。日豪関係についての彼の発言は、いまいち歯切れが悪かった。豪も今年の総選挙で与党労働党が連邦議会の過半数を失ったが、野党も過半数には届いていない。そのような中で、労働党は、ラッド首相が退き、新しい指導者ギラードが、豪史上初めての女性首相に就任した。
これまで、日本と豪は、アジアにおいて、お互い、自由民主主義の理念を掲げるまともな中堅以上の国同志として、政治経済の現場ではかなり仲が良かった。領事事務を担当するアジア勤務の知り合いのノンキャリ外交官の話でも、情報収集はじめ、困った時は「豪外交官頼みだ」と述べている。安全保障面でも、わが国自衛隊が、イラクをはじめとする多くの場面で、手足を縛られた状態で立ち往生しているのを支援してくれていた。親中国外交に大きく舵を切ったラッド前首相は、ギラード新内閣で外相に就任したが、先般の日中の尖閣問題を機に、中国との関係をさらに改善をしてきている。自閉症気味の日本の論壇、マスコミは、些細な日本攻撃でも「決して許すことはできない」とまなじりを決するが、親中のラッドも、首相の時は人権、チベットできちんと中国批判は行なった。そのつど、多くの煮え湯を中国から飲ませられている。その一つが、豪企業の産業スパイ問題だった。
日豪関係は冷却化してきている。現在シー・シェパードは、2隻の船を出し、日本の捕鯨調査船を追跡中である。衝突は時間の問題だ。アボット氏は「日本の伝統文化保持の気持ちは分かるが、はるばる他人の海域近くまで船を出してのクジラ虐殺は、考え直してくれ」と述べたが、今豪国内で強くなりつつある環境団体などの激しい反発を意識した、苦しい胸のうちが垣間見られた。
1970年代、メルボルン在勤のフランス領事と会話したことがあったが、「南太平洋の仏の核実験に反発した豪の過激団体に、事務所を灰で滅茶苦茶にされてしまいました」と、笑いながら述べていたのを思い出した。豪が提訴した、国際司法裁判所での審理も進行中だ。民主党政権は、また行き当たりばったりの対応を行なうのか。
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