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2010-12-07 00:00
福島瑞穂との“危うい復縁”は政権の致命傷になりうる
杉浦 正章
政治評論家
俳句の冬の季語に「鎌鼬(かまいたち)」がある。小旋風でいつの間にか切り傷が出来るそうだが、菅政権はその「女鎌鼬」に取り付かれた。首相・菅直人が社民党代表の福島瑞穂との“危うい復縁”へとかじを切ったのだ。菅は「旧連立」対「自公」の構図で通常国会を乗りきろうという構えだが、果たして乗り切れるか。歴史は繰り返す。去年の今頃、福島から連立離脱をほのめかされただけで、首相・鳩山由紀夫が震え上がり、急速に普天間問題で「国外・県外」路線への傾斜を強めたことを思いだす。菅は福島から早くも同じ脅しを受けた。武器輸出3原則の緩和で「私がぶち切れないように、よろしくお願いします」とすごまれたのだ。
これに対する菅の反応も、鳩山と似ている。会談後直ちに菅は、防衛相・北沢俊美に対し、「三原則見直しは先送りするように」と指示したというのだ。しっぽが胴体を揺さぶる弱小政党の“復権”である。
菅の社民党への大接近は、浅薄な見通し記事が指摘しているように「公明党牽制」などではない。民主党政治路線そのものの転換と見るべきである。「熟議の国会」が自公ペースの「政権揺さぶり国会」となって、初めて自らの判断力の甘さに気づいたのだ。記者会見で菅は重要な発言をしている。社民党と国民新党との関係を「より緊密、かつ戦略的に捉えて協力していく」と述べたのだ。「戦略的」な思惑があるのだ。
その菅のいう戦略とは何かだが、理念があるわけではない。そこにあるのは数合わせの論理だけだ。弱小2党を加えれば、衆院で3分の2を辛うじて確保出来るという「戦略」があるだけだ。参院で否決されたら衆院で「3分の2カード」を切って、再可決しようというのだ。もちろん予算関連法案が狙いだが、、国民新党が狙う郵政改革法案も、当然俎上(そじょう)に載せざるを得まい。しかし数ある予算関連法案や郵政法案で、「行け行けどんどん」とばかりに「3分の2カード」を斬って乗り切れるだろうか。まず自公は冒頭から身構えて事に当たるだろう。官房長官・仙谷由人の問責決議で冒頭から審議ストップ。たとえ動き出しても、「3分の2カード」を連発すれば、菅への問責決議が出されて可決されかねない。可決されれば、参院は全く動かなくなる。法案審議そのものが成り立たなくなる可能性がある。熟議から対決路線への転換は、まぎれもなく政権自体の弱体化を意味するのだ。
国会が動かなくなれば、解散か、総辞職かの選択を迫られる。いずれにしても政権は追い込まれるしかないのだ。新聞はどこも気づいていないが、「反米」福島との接近は、持ち直しつつある日米安保関係に悪影響を与えるだろう。恐らく米国は、菅・福島会談で早くも武器輸出3原則の緩和にストップがかかったことで、あの鳩山政権の“悪夢”を思いだし、身構えていることだろう。日米安保が揺らげば、中露はまた日本揺さぶりの機会を虎視眈々と狙うだろう。民主党政権の論理矛盾が露呈されつつあるのだ。大きな戦略不在のままの、その場しのぎの数合わせのツケは、かならず来るのだ。いつ切れるか分からない「女鎌鼬」との連携に含まれている毒は、政権延命どころか、致命傷になりうる。
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