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2010-12-04 00:00
(連載)対露政策失敗の責任(3)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
では次に、「外務省の情報能力の低下が日露関係の悪化や今日の事態を招いた」との論はどうだろうか。自民党の石原伸晃議員は11月21日のNHK日曜討論で、「政府は自らの責任を駐露大使や外務官僚に転嫁している」と批判した。これは正論だが、私は、問題の根はもっと深いところにあると考えている。今の民主党政権だけでなく、自民党政権時代を通じて、日本の国家や政府のあり方自体に問題があると考える。
端的に言えば、対外政策や安全保障政策が、国家にとって真剣勝負の問題としてとらえられていないのだ。日本が独自の情報機関や国家機密に関する法さえ有していないということが、つまり日本の国家制度が、そのことを象徴している。近年の相次ぐ機密漏洩事件も無関係ではないが、わが国の情報能力の弱体性や情報に関する無防備性は、戦後日本の異様な「国の様態」の当然の「結果」であって、それが日露関係を損ねた「原因」ではない。
また日露の国家関係の諸問題の原因を、情報問題に集約するのは、問題の矮小化である。ましてや、外務官僚など特定の個人の責任に転嫁するのは、何らかの意図があると見た方が自然だろう。もちろん、政治家や官僚が、国家関係で致命的な過ちを犯すことはある。例えば2000年8月末に、当時の野中廣務自民党幹事長が、「平和条約と領土問題は切り離してもよい」という意味の発言をしたことがある。
彼の国家観の基本が問われる深刻な発言だった。しかも、この発言を一部の政治家や外務官僚が擁護した。しかし、この発言は、日本国の主権や政府の基本的立場を否定するものであり、何十年もの領土交渉の土台をつき崩すものであった。ロシア側はこの発言に鋭く反応し、「日本政府は領土問題に関して真剣ではない」と独自の解釈を下した。もし政治家や官僚の重大な責任が問われるとしたら、第一にこのような当人の国家観の根底に疑問があり、その結果国益に深刻な害を与えた場合であろう。(つづく)
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