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2010-12-03 00:00
(連載)対露政策失敗の責任(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
新たな独創的アプローチと言うとき、日本側がロシア側に求めることは最低でも、プーチンが認めた日ソ共同宣言だけでなく、東京宣言で双方が合意した「4島の帰属問題の解決」という「古い」立場に復帰すること、さらにその先に新たな一歩を踏み出すことを意味する。つまり、少なくとも国後、択捉の交渉を開始し、それを先に進めることである。では、メドベージェフ政権下で、国後、択捉の交渉を本気で行おうとした気配がほんの少しでもあったか。筆者はロシアの大統領府や政府、上・下院議会の責任者や外交関係者などと様々な接触を重ねてきた。メドベージェフが大統領になった2008年5月以来も、あらゆる情報を綿密にフォローしてきたが、ロシア側には日ソ共同宣言を踏み出すような動きは一切なかった。
もちろん日本政府に向けて、裏ルートであれ、そのようなシグナルは発していない。それどころか、メドベージェフは第1副首相として2006年以来の「クリル発展計画」に関わり、色丹島を含む北方領土で学校、病院、発電所、飛行場などの建設が始められた。これは、ロシア領としての既成事実作りであり、島の住民たちも、ロシア指導部はもはや島を日本に返還する意思がない、という意味に受け取っていた。客観的にロシア国内情勢を分析しても、ナショナリズムが強まり、メドベージェフが日ソ共同宣言を踏み越える条件はまったく存在しなかった。しかし、自民党政府の頃から、一部政治家や日本外務省の対露責任者も、メドベージェフの政策に対して、あるいは大統領の「独創的アプローチ」という言葉に、期待と幻想を抱いた。
ここまで述べれば、2009年5月の麻生首相の国会での「不法占拠は遺憾」発言や6月の「北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律(北特法)」の中の「不法占拠」とか「固有の領土」の言葉が、また北方担当相だった前原誠司氏の2009年10月の「不法占拠」発言や、外相時の今年9月の「もしメドベージェフ大統領が北方領土を訪問したら、日露関係に重大な支障が生じる」という発言が、「日露関係を悪化させた」という論がナンセンスだということは明白だろう。
「不法占拠」とか「固有の領土」という言葉は、これまで政府や日本の指導者が長年当たり前の用語として使ってきた言葉である。前原発言も、当然の筋論だ。日本側の「強硬」発言は、ロシア側の強硬な立場を正当化するための、絶好の口実として利用されたのである。プーチン前大統領もメドベージェフ大統領も、「4島はロシア領であることは第2次大戦の結果であり、国際法でも認められている」と、従来のロシアの立場も平然と否定する、驚くべき論を述べている。そもそも、このような暴論を述べるロシアに、日本の筋論を「強硬論」と批判する資格があるのだろうか。(つづく)
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