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2010-11-29 00:00
菅首相の「支持率1%でも」発言は政権末期症状
杉浦正章
政治評論家
どうも首相官邸の主というのは、政権が末期症状をきたすと、サイレント・マジョリティに期待したくなるものらしい。物言わぬ多数派が必ずどこかにいて、支持してくれるはずだ、と思いたくなるのだ。首相・菅直人の「内閣支持率が1%になっても辞めない」発言もその部類にはいる。言葉とは裏腹に、相当心理的に追い詰められていると感ぜざるをえない。逆にまさかの「退陣」か、「解散」のオプションが脳裏にちらついている証拠でもあろう。
相手が前首相・鳩山由紀夫だからつい気を許してしまった発言だろうが、ルーピー鳩山は絶対に気を許してはならない相手である事を忘れている。本人に悪気がないだけに、言ってはならないことを、影響を考慮するに至らぬまま、公にしてしまうのだ。この発言も、野党が「独裁者宣言」と反発してもおかしくない。北朝鮮の暴君ですら発言をはばかるだろう。反響の大きさに慌てて、鳩山が「菅さんのお友達から聞いた話だ」と取り繕っているが、後の祭りとはこのことを言う。菅は、これに先立って「どこまで頑張り切れるかどうか分からないが、石にかじりついても頑張りたい」と、国会で発言している。これはかなり本音が出た発言だ。「1%」発言も夜の酒席ならともかく、昼間の会食での発言であり、酔って息巻いたのとは違う意味合いがある。
首相という職業は歴代、世論調査や新聞テレビの評判を気にしていないように装っているが、極めて気にしているのが実態だ。特に政権末期は、一喜一憂の振幅が激しくなる。古来取り巻きのごますりに始まって、政権トップにはいい情報しか入りにくい。裸の王様たるゆえんであろう。名官房長官・後藤田正晴の「5訓」の2番目に「悪い本当の事実を報告せよ」があるが、本来権力者というものは、悪い情報は聞きたがらない。耳ざわりのいい情報で心の安らぎを得たいのだ。悪い情報を最初に聞くというのは、権力者でもよほど腹が据わっていないとできない。
冒頭述べたように、追い詰められた首相の発言には類似性がある。世の中にはサイレント・マジョリティが存在すると思い込みたいのだ。安保改定で追い込まれた首相・岸信介が、「国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつもの通りである。私には声なき声が聞こえる」と発言して、物議を醸し、結局退陣した。福田赳夫も、総裁選に先立って「『福田やれ』の声が全国津々浦々に満ちている」と述べ、敗退した。「支持率1%でもやる」発言は、「支持率調査など信用出来ない。この菅直人を支持してくれる人はいくらでもいる」という思いの裏返しでもある。
ところが、最近の世論調査の結果は、正確なものが多い。国政選挙の票読みもほぼ当たるようになってきている。世論調査の数字が、国民の首相に対する気持ちを反映したものである事は、まず間違いないだろう。菅発言は、「1%以下のゼロ%になれば退陣しなければならない」ことになるが、少なくとも伸子夫人は支持してくれるだろうから、ゼロ%にはなるまい。現在23%の支持率は10%台をのぞいており、10%台になれば、党内からも首相交代論が出始めよう。竹下登が4.4%になるまで政権維持できたが、これは例外中の例外。後は、10%台か、20%台で退陣に追い込まれている。いずれにしても菅発言は歴史に残る「迷言」の部類に入る。公の場で発言したものなら、昔なら軍事クーデター、いまなら首相官邸にデモ隊が取り巻くような部類だが、弱った菅の心情吐露であろう。沈んだ首相は国民の心理にも影響を与える。長続きしない方がよい。
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