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2010-11-18 00:00
野党包囲網で柳田法相は、問責可決へ
杉浦 正章
政治評論家
小泉進次郎はその発言において父親譲りのセンスのよさをみせている。法相・柳田稔の「答弁は二つ覚えておけばいい」という“迷言”に対して、「それなら法相はロボットでいい」とずばり核心を突いた。ロボットでよいような法相は、その職にとどまるべきではないが、参院の機運は、どうも戦後4人目の問責決議可決となりそうな雰囲気となってきた。野党の反民主党包囲網が出来つつあり、可決となれば、みたところまず辞任しか道はあるまい。
官房長官・仙谷由人は柳田の責任を問われて「資質には問題ない」と述べたが、問題の焦点はその資質にあることが分かっていない。国会で「ビデオを見たか」と問われて、「何のビデオか」と逆質問する愚鈍さは並大抵ではない。とりわけ「二つの答弁」発言は、野党にとって絶好の攻撃対象が浮上したことになる。「『個別の事案については答弁を差し控える』『法と証拠に基づいて適切にやっている』と答弁すればいい」という発言は、委員会で実際に繰り返されている。閣僚の“迷言”の中でも、もっとも野党が一致して攻撃しやすいのは、「国会軽視」発言だ。しかも、これほど質問者をばかにした発言は珍しく、野党の結束を招きやすいのだ。
自民党政調会長・石破茂は「言語道断。一日も早く職を辞すことが国家のためだ」と、いきり立っている。参院自民党国対委員長・脇雅史は民主党に対して問責決議案上程を通告している。同決議案は公明党が乗るかどうかが焦点だが、代表・山口那津男は「軽率な発言だ。緊張感のなさが政権を覆っている」と前向きだ。自民党は問責可決にかなりの自信を持っている。というのも、先に衆院で否決された仙谷と国交相・馬淵澄夫に対する不信任決議案で、社民党を除く野党が結束できたからだ。倍以上の大差で否決されたが、野党結束の意義は、参院で過半数による可決を視野に入れることが出来るだけに、大きいのだ。過去に問責決議案が可決された例は意外に少ない。防衛庁長官・額賀福志郎、首相・福田康夫と同・麻生太郎の3人だけだ。問責決議は衆院の不信任決議と違って法的拘束力はないが、今回の場合は額賀が辞任したケースと類似性が多く、結局辞任せざるを得まい。というのも、問責決議が可決されれば、野党の審議拒否へとつながり、参院の全委員会がストップするのは必至だからだ。
混乱のまま12月3日の会期切れに逃げ込もうとしても、通常国会が冒頭から大混乱となり、本予算審議と絡んで政権を直撃する事態になりかねない。柳田のクビは、どうみても、それほどまでにして守らなければならない価値のあるものでもあるまい。したがって、可決されれば、菅は辞任を求めるしか手はないだろう。柳田の進退は窮まっているのであり、問責決議など待たずに、自ら辞任するのが政権にとって最善の策である。このころカラスの鳴かない日はあっても、閣僚が失言・迷言で国会で陳謝しない日はない。連日のように仙谷が陳謝すれば、防衛相・北沢俊美も陳謝。そして柳田の陳謝だ。首相・菅直人が「実務を積み重ねているのに、なぜこんなに支持率が落ちてしまうのか、理解できない」とぼやくのも無理はない。民主党一家が総出で政権基盤を崩しているからだ。自民党が仙谷も含めて数人の問責決議案を出そうとしているのも、珍しい。政権がスタートして半年で末期症状が現れているのだ。
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