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2010-11-05 00:00
小沢招致は国会の議決しかない
杉浦 正章
政治評論家
「おれが作った」とかねてから自慢していた政治倫理審査会に、小沢一郎は出席拒否である。それも「司法で取り上げられたから」などという小賢しい理屈をつけての上である。これにたいして民主党独自の対応では、小沢の離党・政界再編に直結しかねないため、恐らく首相・菅直人以下腰が引けている。かくなる上は、与野党の議決で政倫審に招致するか、これに応じなければ出席を強制できる証人喚問を要求するしかない。国会が一致して動くべき時だ。民主党幹事長・岡田克也と小沢の会談が物別れに終わった後、最高顧問・渡部恒三が「党員である限り、どうしても幹事長の言うことを聞けないという場合は、党を離党するということだろう」と強く反発。「除名すべきだ」という声もあちこちで出始めた。
いずれも威勢だけはいいが、犬の遠吠えに似て実行力が伴わない。なぜかといえば、離党や除名は小沢の得意技である党分裂・政界再編に直結する事があり得るからだ。民主党内は、北海道5区補選の惨敗などで、代表選挙で小沢に投票した200人の衆参議員の多くが、あらためて自らの不明を恥じ始めているのが実情だろう。しかし、まだまだ「小沢信者」は多い。民主党衆院議員305人のうち64人が小沢と行動を共にして離党すれば、民主党は過半数割れして、政権崩壊の危機に瀕する。菅も岡田もこれに怖じ気づいているから、言動のすべてが恐る恐るなのだ。
したがって、小沢自らの離党はおろか、執行部による除名も、将来小沢忌避ムードが圧倒的になれば可能にしても、現段階では「夢」でしかない。それではどういう対応があり得るかだが、国会が動くのがベストだろう。小沢は検察審査会が起訴を議決した直後に「国会の決定には、いつでも従う」と明言しているのだ。したがって、まず政倫審が動くことだ。政倫審の過去の例を見れば、1996年の加藤紘一招致に始まって、9人の議員が出席しているが、いずれも「疑惑を解消したい」との本人の意思に基づいている。1度だけ例外がある。2009年7月に鳩山由紀夫の個人献金偽装問題について委員の過半数の議決で招致しようとしたが、鳩山はこれを拒否した。制度上拒否できるのだ。小沢も拒否する可能性があるが、政倫審には奥の手もある。国会議員が政治的、道義的に責任があると認めたときは、3分の2の多数で行為規範等の遵守の勧告、一定期間の登院自粛の勧告ができるのだ。登院自粛は厳しい措置である。また衆院での開催が困難なら、まだ一度も開いていない与野党ねじれの参院で開催することも考慮に入れるべきだ。
政倫審ができなければ、憲法の国政調査権を発動して証人喚問をするしかない。証人喚問の議決は、1955年以降全会一致が原則であるが、多数決で議決されて証人喚問が行われたことも、衆議院では3例、9人がある。この議決は強制力が伴い、証人は拒否できない。野党が多数を占める参院予算委で議決をしても可能となろう。要するに、民主党内事情を考慮すれば、小沢の国会招致は与野党で決めるしかあるまい。場合によっては、議決に当たって民主党が「自由投票」にすれば可能となるケースもあろう。菅がそれくらいの決断をしても罰は当たるまい。
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