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2010-09-27 00:00
「普天間失政」を上回る「尖閣大失政」
杉浦正章
政治評論家
鳩山由紀夫の「普天間失政」を上回る首相・菅直人による「尖閣大失政」である。しかも戦後の日本外交にとって空前絶後の対中敗北である。すべてが民主党政権の“素人外交”に起因している。2度あることは必ず3度ある。もはや民主党政権の外交路線を信用することができなくなった。「尖閣」が焦点となる10月1日からの臨時国会を通じて、事実上の検察に対する指揮権発動が明確化され、菅政権は窮地に陥ることは目に見えている。もともとご祝儀相場の内閣支持率65%(NHK)が、うたかたの如く消えるのは間違いない。「尖閣猿芝居」は、内閣不信任案上程に値する問題であり、混迷不可避の「尖閣政局」の幕開けだ。民主党幹事長・岡田克也は、早々と政府側と口裏を合わせたとみえて、船長釈放の判断をすべて検察の責任に帰する方針を26日明かにした。しかし政府・与党がこれで突っ張れると思っているとすれば、その政治判断自体がが狂っている。
いくら詭弁を弄しても、国会の焦点は、検察への政治介入があったかどうかの一点に絞られる。問題は、最高の政治判断を必要とする外交問題を那覇地検の次席検事ごときに「今後の日中関係を考慮して」と発言させて、見破られないで済むと判断した政治家は誰か、と言うことだ。そのゴーストライターは、菅と官房長官・仙谷由人以外の何者でもあるまい。すべての状況証拠がそれを物語っている。まず外相・前原誠司が、船長釈放の半日前の9月23日朝にクリントンとの会談で「間もなく解決します」とささやいたこと。これは首相官邸の主導に外相も一枚噛んでいたことを物語る。つぎに菅だが、まず第1に周辺に当初から「超法規的措置」を漏らしていたことが挙げられる。加えて釈放直前まで、ニューヨークの菅が「イラ菅」に変じて、これが官邸、霞が関にぴりぴりと伝わっていたことが挙げられる。釈放されると、明らかにほっとした表情で、「検察当局の総合判断」と発言した。まるで三流シナリオライターの書いた“猿芝居”そのものではないか。
そのシナリオも、政治の最高権力者が絶対見せてはならない「卑怯未練」の範ちゅうに入る。なぜなら、明らかに超高度の政治判断を、一地方の次席検事に押しつけるという“逃げ込み策”を選択したからだ。「検察当局の総合判断」という発言は、首相として「自らの責任を放棄する」と宣言したに等しい。そのことが分かっていない。これは国内ばかりか、当の中国政府首脳や、固唾をのんで見守ってきた東南アジア諸国、米国の外交専門家などにも、嘲笑の輪を広げたに違いない。鳩山由紀夫の外交音痴にもあきれたが、中国の“脅し”にまる乗りしてしまった菅と仙石主導のシナリオのひどさは、鳩山を上回るほど度し難いものがある。要するに外交のイロハを知らない門外漢が連続で官邸の主になってしまったということである。粛々と国内法に基づいて処理するはずであった検察当局への政治介入は、やすやすと行われたに違いない。なぜなら検察首脳は特捜検事のデータ改竄容疑事件で「検察は死んだ」と言われるほど窮地に陥っており、政治に対して弱い脇腹を露呈していたからだ。検事総長以下、おそらく唯々諾々と命令に従ったのであろう。語るに落ちたのは法相・柳田稔が、直ちに行った「指揮権発動なし」談話だ。問題化もしないうちから、なんで指揮権発動に触れたのか。船長釈放の発表は、柳田が仙石と会って1時間後に行われているのも、政治介入の状況証拠だ。岡田は指揮権発動説を「国益を損なう」と発言したが、最初に国益を損なったのは、どう見ても民主党政権自体だ。
臨時国会における野党の追及は、自民党幹事長・石原伸晃が要求したように、那覇地検次席検事・鈴木亨の証人喚問から始まるだろうが、自民党も地方の次席検事への追及で事足りるとは思ってはいまい。未曽有のデータ改竄事件もあり、検事総長・大林宏の国会招致で「政治介入」の構造を暴くことが不可欠であろう。この民主党政権の誤判断は、曲がりなりにも外交のノウハウを蓄積した自民党政権下では起きなかったであろう。首相・小泉純一郎は尖閣諸島に上陸した中国の活動家を直ちに釈放して、中国につけいるすきを見せなかった。首相側近は、菅の対応についてしきりに「戦争になるより良かった」と弁明しているが、これも語るに落ちたど素人の論理だ。これは中国の“脅し”を首相以下がまともに信じてしまったことを物語るものに他ならない。筆者は絶対に戦争にはならなかったと思う。試しに国会でも「戦争になるより良かった」と答弁してみるがよい。与野党からの嘲笑の対象になる。この場面の菅の役割は、たとえ問題が長期化しても中国を交渉に引き込むこと以外になかったのだ。
中国は「賠償と謝罪」の要求が象徴するように、「尖閣勝利」で築いた新たな地歩を背景に、今後かさにかかった対応をしてくるだろう。日本側としては、尖閣の灯台への人員配置や、同海域での米国との軍事演習など対抗手段はあるが、とても露呈した菅の能力の範ちゅうを越える問題であろう。何より大きな損失は、日本国民の矜持がおとしめられたということだ。民族の存立の根底にある問題に影を落としてしまったのである。「元気のある日本」を標ぼうしてスタートしたばかりの菅内閣が、「元気のない日本」の音頭を率先して取る結果となったのだ。固唾をのんで見守っていた東南アジア諸国への日本のリーダーシップも地に落ちた。菅は謝罪拒否を明言したが、いまさら言っても負け犬の遠吠えそのものだ。新聞は、菅が「ベニスの商人」のように、中国に揉み手で薄笑いしているところを漫画にしたらうける。
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