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2010-09-24 00:00
(連載)円売り介入を活かす法 (2)
田村 秀男
ジャーナリスト
レーガン共和党政権時代、米国ではドル安誘導の果てに1987年10月19日の「ブラック・マンデー(暗黒の月曜日)」と呼ばれるドル、株、国債のトリプル暴落事件を招来して、世界の市場を震撼させた。レーガン政権の後を継いだ父ブッシュ政権はその悪夢から、日本との通商交渉の妥協の条件として米国債購入の約束を日本政府に求めたほどだ。1993年に発足したクリントン政権は、通商摩擦で日本たたきと円高促進策をとった。しかし、米国債は94年1月までの1年3カ月の間に2.5ポイントも利回りが上昇し、同政権は95年半ばには一転して「強いドル」政策に転じた。
今回も、これまでのところ米国債相場は安定しているが、いつドル安の影響で米国債が一斉に売られ、暴落の憂き目に遭うかはわからない。オバマ政権の金融専門家たちは内心は落ち着かないはずである。だからこそ、世界最大の米国債保有国中国の人民元操作に対し、オバマ政権は強硬策をとれないままだ。それでも、中国がワシントンにとって信頼できるパートナーと言いきれるはずはない。中国は北朝鮮、イラン、アフリカなど外交問題とからめてくるに違いないからだ。ならば、やはり同盟関係にある世界最大の債権国日本と協調するしかないはずである。平時はどうでもよい。米国債暴落というような非常時に即座に対応して、無条件に米国債とドルの買い上げに巨額の資金を投入できるのは日本しかないはずだ。
菅首相は、こうしたドル及び米国債の非常時での日本の全面協調をオバマ大統領に約束するかわりに、円高是正のための介入を米国にはっきりと「容認」させる必要がある。それこそが、日米同盟であり、首脳外交というものだ。もうひとつは、日銀を明確な量的緩和に踏み切らせることだ。円売り介入では財務省がまずは日銀から資金を借り入れて、外国為替市場でドルを買い上げるわけで、市中には円資金がその分注入される。すると一時的に量的緩和の状態になる。ところが、財務省はそのあと政府短期証券という一種の短期国債を発行して金融機関の持つ預金を吸い上げ、日銀に返済する。すると、市中から日銀資金は消え、量的緩和状態が解消する。これではもとの木阿弥である。
そこで、政府は日銀に対し、政府短期証券を直接引き受けさせればよい。あるいは、市中にある政府短期証券を日銀が買い上げてもよい。そうすれば量的緩和状態が続く。すると、円売り介入と金融緩和の双方の効果が実体景気に表れ、デフレ対策になる。以上の政策をしっかりと実行する。いくら経済オンチでも、菅直人政権はそのくらいはやり遂げられるだろう。(おわり)
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