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2010-09-23 00:00
(連載)円売り介入を活かす法 (1)
田村 秀男
ジャーナリスト
失礼を省みず言うが、菅直人首相とその政権は、日本の政治史上類をみないほどの経済オンチと言うしかない。その存在自体が、日本の災厄の元凶と心配になる。やっと踏み切った円売り介入の前には、菅首相が介入のために米欧と事前協議していることをばらしてみたり、介入したあとは仙谷由人官房長官が1ドル82円の水準が許容限度であると平気で言ってのける。揚げ句の果てには、米欧やブラジルから日本単独の市場介入を批判されている。下手をすると、日本は国際社会で通貨切り下げ競争の口火を切ったと非難されるだろう。肝心の介入も、国際的な円投機攻勢という巨大な火勢にバケツで水をかけるようなことになってしまう恐れがある。
音痴を治すのはもとより不可能に近いことは、読者にも心当たりがあるだろう。訓練すれば多少の改善は見込める。きちんと音符を読み、その音を実際に繰り返し聞いて発声してみることだ。しかし、経済政策でそのような練習を繰り返しても、改善までには途方もない時間がかかり、その間に災厄が進行して、われわれ国民は全員焼き出されてしまう。さりとて、もはや総選挙でもなければ、この政権を一掃するわけにもいかない。ならば、どうすればよいか。不勉強、無能ぶり、無見識ぶりを自覚し、直ちに為すべき政策を受け、さっさと実行してもらうしかない。以下は、筆者が考える提言である。
まず、円売り介入だが、とりわけワシントンのせめて「黙認」をとりつけることだ。「協調」が一番望ましいが、ドル安政策をとって輸出を増やすことで、景気のテコ入れに懸命なオバマ政権は渋るだろう。が、国際金融というのは、グローバルに展開されている。もともと、円高の主因はリーマン・ショック後、米国が一挙にドル資金を二倍以上も刷って市場に垂れ流し続けていることが原因だ。余剰ドルはシカゴ、ニューヨークの先物市場での投機に回され、日本円が穀物や原油、金(きん)と並ぶ「国際商品」として投機買いされている。この変則的な円投機に対して、日本国が毅然として円の価値安定のためのアクションをとるのは当然である。菅首相は、そのことを堂々とオバマ大統領に対してぶてばよろしい。そんな弁舌もできない人物では、もとより政治家として失格である。
オバマ大統領にはもう一つ、言うべきことがある。それは、1985年9月の「プラザ合意」以降、日本は米金融市場がドル暴落不安にさらされたとき、世界に率先してドル買いに応じてきた歴史である。ドル安下で米国債が急落すれば、ワシントンは大慌てに慌てることは、過去の事例から見て明らかだ。(つづく)
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