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2010-09-03 00:00
(連載)ロシアの対日戦勝記念日にどう対応すべきか(3)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
このような捏造された歴史観やそれに基づく報復主義が、ロシアの歴史教育では正されていないし、きちんとした歴史教育も為されていない。領土問題も解決されていない。だからこそ、日本は、今の状況のままで9月2日をロシアが戦勝記念日とすることに、はっきりと抗議する必要があるのだ。もちろん、抗議に際しては、ここに述べたような理由も、明確にロシア側だけでなく、国内外に声明しなくてはならない。
これに関連して想起されるのは、2005年5月にモスクワで世界各国首脳を招いて大々的に開催された対独戦勝60周年記念式典のことである。このときの日本の小泉首相と米国のブッシュ大統領のアプローチは、対照的であった。
当時の小泉首相は、招待を受けたとき、当初は「出席するつもりはない」と述べて、プーチン大統領を慌てさせた。日本の首相が不参加となれば、ロシアにとって大きなイメージ・ダウンになるからだ。小泉首相が「出席しない」と述べても、国際的には十分理解されたはずだ。というのは、日本はドイツとおなじ敗戦国だが、ロシアとは日本だけが戦後処理が終わっておらず、平和条約が結ばれていないからだ。領土問題が解決していないのに、ノコノコ戦勝のお祝いに駆けつける筋合いのものではない。もちろん、外交的な配慮で参加することも考えなくてはならないかも知れない。その場合は、この機会を、歴史の正しい認識と日露の平和条約締結を訴えるために利用すべきだ。
ブッシュ大統領はこのとき、バルト3国の首都リガに立ち寄ってから、モスクワ入りした。リガで大統領は「ヤルタ協定は、米国の歴史における最大の過ちだった」と、世界に向けてはっきりと述べたのだ。米国よりもその事をもっとはっきり訴えるべき立場にある日本の首相は、主張すべきことも主張しないで、ただニコニコ愛嬌を振りまいて、プーチンとの個人的な友好をアピールしただけであった。このとき日本がもっと毅然とした態度をとり、また主張すべき事をきちんと主張していたなら、今回ももっと筋を通したはっきりした態度を取れたはずである。それによって、日露関係が悪化するのではなく、逆にロシアは日本を尊重し、一目置くようになるのだ。最近のロシアの日本無視、あるいは蔑視の態度は、「日本は何も主張しないし、出来ない。もはや日本は、本気で相手にする国ではない」と見くびっている証拠である。(おわり)
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