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2010-09-01 00:00
民主党早くも末期症状の分裂指向
杉浦 正章
政治評論家
民主党分裂回避のための鳩山由紀夫の調停が失敗したのだから、代表選挙は分裂含みの激突段階に突入したということだろう。国民の8割が首相になることを期待していない世論無視の「小沢暴走」が根底にある。壊し屋小沢一郎がその本領を発揮して、民主党政権まで壊しかねない状況を作った。これほど国民不在の党首選挙を知らない。民主党政権は発足1年で末期症状とも言える状況に立ち至った。とにかく小沢はぶちこわす。政党組織も、人間関係も長続きさせない。新進党の解党、自民党時代の政権離脱などの例を挙げるまでもなく、小沢政治の歴史は壊し屋の姿そのままである。自ら作った民主党政権も政権交代の大目標を達成するやいなや、紛れもない権力闘争で党分裂の危機を作っている。そこには異常なほどの“我執”だけが存在する。それもその立ち位置は大局を見ずに、凡夫の“小我”にとらわれている。検察審査会の強制起訴逃れで首相を目指す、などといううわさが絶えないことがそれを象徴している。
その小沢を民主党議員が本気で選ぶのだろうか。数の論理でいえば小沢サイドのなりふり構わぬ多数派工作で、小沢が有利であるとされている。しかし代表選挙は首相を選ぶ選挙だ。自らの秘書が3人も逮捕され、「政治とカネ」で一切の説明責任を拒否し続け、嫌疑不十分で辛うじて起訴を免れた政治家を、民主党議員は首相候補としてふさわしいと思っているのだろうか。衆院308議席を民主党に与えた民意は、8割が「小沢首相」を忌避している。小沢を選ぶということは、紛れもない民意無視であろう。一知半解の女性柔道家が繰り返す「小沢支持」発言が象徴していることは、投票行動のもたらす意味を知らない新人議員が多いことだ。小沢を選んだ議員は、次の選挙で必ず手痛いしっぺ返しを食らうことが分からないのだ。説明責任を問われるのは小沢だけではない。有権者を抱えている議員一人一人が説明責任を果たさなければならないことになるのだ。
代表選は、菅と小沢の会談で選挙後の挙党態勢で一致したにもかかわらず、既に泥仕合の様相を濃くしている。菅サイドが「政治とカネ」の疑惑や小沢代表時代の組織対策費疑惑を突き始めている。菅自身が「政治とカネで混乱するようなことのない政治を作る」とあからさまに口火を切っている。選挙戦の白熱化は両陣営の“自制”を困難にしており、選挙後は大きなしこりを残して、党分裂指向を強めるだろう。小沢が敗れれば、菅にとっては「脱小沢」が完結したことになり、小沢は干される。小沢の行動パターンからすれば、離党が選択肢に入るだろう。逆に小沢が勝てば、「小沢首相」が国会審議に耐えられるとは思えない。首相指名選挙を契機として再編の動きが生ずる可能性が出てくる。
代表選挙は、世論の影響を受けやすい党員・サポーターで菅が有利と言われている。自民党が初の党員参加の代表選を実施したのは1978年だが、現職首相の福田赳夫はその予備選に負けたと見るや、本選挙を辞退して退陣した。まさに民意を重視した政治家らしい行動だが、小沢が福田の政治的英知に学ぶことはまずないだろう。鳩山は説得するなら小沢の“暴走”をこそ戒めるべきだったのだが、力量不足立証済みの鳩山に党内外が「調停」を期待したのが間違いだった。鳩山が「ボクは何だったんでしょう」と語ったと読売が報じているが、愚昧さがまたまた露呈された。朝日が社説で「鳩山氏は身を慎むべきである」と強くたしなめ、読売が「調停役として不適格」と烙印を押しているとおり、茶番劇の主役を演じたに止まった。
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