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2010-08-24 00:00
政治を動かす「自然災害」
川上 高司
拓殖大学教授
世界中の異常気候とそれによって発生する自然災害が、政治に影響を与える新たな要因として浮上してきている。パキスタン政府は3万人以上の軍を投入して救助に当たるが、全く追いついていない。スワット地区はパシュトゥ人の地元でタリバンの支配地域であったが、過去に大規模な軍を投入してタリバンを追い出したばかり。しかし、多数の橋が流され、道路は崩落と土砂崩れで寸断されており、軍は被災地に陸路で入ることすらできない。すでに救助の遅れに対して、住民の政府への不満は高まっている。
一方で、パキスタン・タリバン系の過激派組織が避難キャンプを随所に建て、人々に温かい食事や水、衣料品などを提供している。タリバンは、この災害をスワット地区を取り返す絶好の機会ととらえ、活発に活動している。このままいけば、この地区の人々の支持を得て、タリバンの復権はそう遠い将来ではない。スワット地区でタリバンが復権すれば、間違いなくアフガニスタン戦争に影響する。さらにパキスタンはアフガニスタンへの主要な補給ルートとなっているが、今回の洪水でそのルートが使えなくなり、駐留軍への補給はストップしたまま。パキスタンの洪水は、アメリカやヨーロッパにとって他人事ではない。
中国とパキスタンを結ぶ経済の大動脈であるカラコルム・ハイウエイ(KKH)も寸断されて、復旧の見通しは立っていない。北西部に始まった洪水は、インダス川に沿って600キロを下って、流域に被害をもたらし、さらに300キロの下流のシンディ地域に到達するのも、時間の問題となっている。国内で3番目に大きいダムもすでに危険水位を超えて、決壊の危機にあり、さらなる災害の恐れが生じている。
この緊急事態時に、パキスタンのザルダリ大統領はロンドンに外遊し、国内では批判の嵐が吹き荒れている。大統領への批判が高まっていけば、政治的不安定をひきおこしかねない。パキスタンの政治情勢が先行き不透明となれば、それはつまりアフガニスタン情勢に影響を与え、オバマ大統領のアフガニスタン・パキスタン政策にも影響がでる。世界がフラット化した現在、地球の裏側の自然災害は、即、自国の問題へとつながる可能性の高い、新たなグローバル・イシューの登場である。
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