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2010-08-06 00:00
寄付を妨害する日本の公益法人制度
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
日本の新聞にも大きく報道されたからお読みになった方も多いと思うが、あのビル・ゲイツとウォーレン・バフェットが、48人の富豪たちに少なくとも私有財産の半分を寄付するように呼びかけて、1500億ドル(1ドル85円として12兆円余り)を拠出させる事に成功したという。「呼びかけは、難しかったか」と訪ねられて、バフェットは「なに、易しかった(soft sell)」と言ったとか。
日本の感覚だと、寄付というと、赤い羽根か、ユニセフに「どうぞお使いください」とポンと差し上げる(時とすると遺言で、生まれた村の役場に、なんていうのもある)イメージだから、「それはまあ奇特な」で終わってしまう。しかし、彼らの言う「寄付」というのは、これとはまるきり違う。そのおカネを何のために、どう使うのか、というイメージがはっきりしているのだ。例えばビル・ゲイツが創設し、バフェットが賛同して330億ドルで設立したビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を見てみよう。この財団は3つの分野にのみ興味がある。つまり、それ以外の目的にはおカネは使わない。3つの分野とは、途上国の貧困絶滅、公衆衛生そして米国における高校教育の質の向上である。全世界に事務所を持ち、800人を超えるスタッフが質の良い、革新的なプログラム開発にあたっている。
ふるさとの母校に「必要な目的にお使いください」と寄付をして、旧くなった渡り廊下の設備が新しくなったというのとは、ひと味違って、例えば母校の国語の教材にふるさとの歴史を織り込んだ教材を使用してほしい、その教材開発から、教え方の手法、もしかすると専門の教員まで派遣します、教材や教授法の開発には専門家やふるさとの生き字引をフルに動員して、その経費はもちろん負担します、という具合だ。
先のゲイツ財団の例で言えば、ゲイツの問題意識の中に、小児麻痺ワクチンさえ投与されていれば病気にかからないで済んだ子供たちか、途上国における絶対的な貧困、それと身近なところでは、荒廃したアメリカ公教育、就中高校教育があったことは疑いない。これらの問題に取り組む個人や組織に対して助成をする。つまり、自ら手を下して実行したりはしない。それでいながら、質の良いプログラムの「めきき」をするために、プログラム・オフィサーと言われる人々を多数雇用する。そんな財団なのだ。日本では、先ず無理だね。馬鹿げた公益法人制度があって、1兆円を寄付して財団を作ろうとすると、「毎年入ってくる収入は一文残らず使い切るのでしょうね。万が一使い残りがあったら、次の年には使い切らないといけませんよ」とか、小役人がいろいろと注文を付ける仕組みになっている。そんなことを言われて1兆円を寄付しようなんていう物好きはいないよね。
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