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2010-07-20 00:00
ロシアの西側接近という幻想
岡崎研究所
シンクタンク
『ワシントン・ポスト』紙の6月22日号で、ブッシュ政権時に国務次官補代理を務めた独マーシャル・ファンドの David J. Kramer が、ロシアに入れ込みすぎることに警鐘を鳴らしています。すなわち、「好戦的ではない、経済に主眼を置いたロシアの外交政策文書が最近「リーク」されたことで、ロシア大統領はロシアをより親西側スタンスに変えようとしていると思う向きもあるが、この文書も注意深く読めば、こうした甘い考えを裏付けるものではないことがわかる。例えば、この文書も、全体ではロシアの勢力圏の確立をはっきりと支持し、旧ソ連諸国を統合する必要と、地域外勢力がロシアと旧ソ連諸国との関係に介入する動きには積極的に反撃する義務を強調している。また、オバマの多国主義を称賛する一方、米国内におけるオバマの政治的立場の弱体化に警鐘を鳴らしている」と述べて、メドヴェージェフ訪米の意味を読み間違えないよう、警告しています。
最近のロシアを動かす基本要因は、(1)2012年の大統領選挙と(2)石油依存のロシア経済の改革であり、そのための西側との協力関係の拡大ということに集約できます。メドベージェフ大統領は、昨秋以降、リベラル、経済刷新・石油依存脱却を旗印に掲げ、保守・秩序維持重視とされるプーチン首相との違いを示そうとしています。彼がプーチンに対抗して大統領選挙に出馬するかどうかはまだ不明ですが、その準備は整えつつあり、今回の訪米はその一環と言えます。
他方、オバマ政権は、経済回復とイラク・アフガニスタン介入の決着に最重点を置いており、ロシアと不必要な対立をしている余裕はありません。しかも、イラン・北朝鮮制裁やアフガニスタンへの物資輸送については、ロシアの協力を必要としています。従って、この論説が言うような対ロ警戒論は意識しながらも、ロシアに対しては当面、協調・協力が基調になるでしょう、米国による台湾への兵器供与決定以来、米中関係が冷めたままのように見えることと対照的です。
ただし、オバマ政権も、「ロシアはわれわれと利益も価値観も異なる」ことは重々承知していますし、ロシア側も、西側への協調姿勢を強め過ぎれば、国内政治上もたなくなることを知っています。さらに、ロシア経済刷新のための協力と言っても、西側が政府レベルでできることは限られていますし、これまでの幾多の例が示すように、ロシアの改革への試みが、官僚主義と汚職によって潰えることはほぼ必至です。従って、西側の「対ロ協力」も、ロシアの「対西側協調」も、内実はレトリックと雰囲気が大部分を占めることになるでしょう。ただ、西側にとっては、リベラル・対西側協調路線に自分の政治生命を賭けたメドベジェフは都合のいい存在であり、これを持ち上げていくでしょう。日本も当然、これに乗ることを求められ、乗ることとなるでしょうが、どの国も本気ではないことは認識しておく必要があります。
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