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2010-06-22 00:00
消費税増税をめぐり“揺さぶり”に出る親小沢派
杉浦 正章
政治評論家
NHKの調査で一週間で12ポイントの内閣支持率低下は、確かにバブルの崩壊と受け取られても仕方がない。首相・菅直人は“ぶれ”の印象を与えずにいかに沈静化するかに懸命だが、党内では早くも小沢グループから“揺さぶり”とも受け取れる動きが出始めた。朝日新聞や読売新聞の調査では、民主党候補に菅発言容認論が強いと言うが、これは大新聞がそろって皮相的見方を紹介していると言わざるを得ない。候補らは、恐らく選挙の現場では消費税論議を回避するか、真っ向から取り上げない方向に動くだろう。官邸キャップとの懇談の席で、いきなり首相・大平正芳が「一般消費税を導入しようかと思っている」と述べたのは1979年のことだ。筆者は驚いて、「選挙前にですか」と聞き返したが、「愚直にやらねば」と言う返事だった。ところが、大平が導入を公表するやいなや、与野党から猛反発が生じ、結局総選挙公示後に断念の表明に追い込まれた。選挙結果は自民党単独過半数割れとなり、以後福田、三木両派などの反主流派が責任を追及して、問題を政局化し、「40日抗争」に突入した。いま、小沢の胸中には、当時の政治状況がありありとよぎっているだろう。
すでに前哨戦が始まっている。小沢側近の参院幹事長・高嶋良充が「国民は消費税に関して、民主党の考えに賛同できない。参院選にマイナスの影響を与える」と、あからさまに菅の10%増税論を批判。6月21日の常任幹事会でも、小沢に近い国会対策副委員長・松木謙公ら5人から「4年間上げないと言っていたのに、撤回するのか」「来年上げるのかと、地元では誤解されている」などと追及の声があがった。幹事長・枝野幸男は、予期せぬ首相の消費税発言への批判噴出に、防戦に追われ、結局「衆院選後」という基本方針を再確認させられた。民主党執行部も菅も、ぶれては鳩山と同じ批判にさらされると、「ぶれとは受け止められないが、沈静化をさせる」というすれすれの球を投げ始めた。菅の「参院選挙が終わったらすぐに消費税を上げる、ようなメッセージが伝わっているとすれば、全く間違い」と実施時期先延ばしでの沈静化がそれだ。
しかし、菅は、6月17日の記者会見では「2010年度内にはあるべき税率や逆進性を含む改革案のとりまとめを目指したい」と述べており、これは「年度内の税率改定案」と受け取られ、新聞も見出しに取っている。結果は、「総選挙後でも、できるだけ早期に」導入したいという気持ちがあったことは確かであり、大平ほどの急旋回ではないが、トーンダウンせざるを得なくなったことを物語っている。菅は、恐らく支持率急落にりつぜんとしたに違いない。内閣支持率は、朝日が1週間前と比較して9ポイント、読売が5ポイント、NHKが12ポイントの下落であり、Ⅰ週間でこれだけ下がった例を知らない。果たして食い止められるかどうかも分からない。
一方で、民主党候補へのアンケート調査では、候補らが理解を示しているような結果が出ている。朝日と東大の合同調査では「消費税賛成寄りに大きくシフトしている」という結果が出ているし、読売も民主候補の53%が「容認」だという。しかし、これは「公式回答」であろう。実態はそうではあるまい。現に参院議員会長・輿石東は、地元の選挙演説では消費税に一言も言及しなかったそうだ。記者会見でも「具体的数字は根拠がないから出せない」と慎重。候補者の間には、消費税増税路線ばかりが目立って、政権政党としての民主党が批判を一身にかぶることへの警戒感が台頭しているのが実情だろう。自分自身の得票に直結するとなれば、公式論ばかり言ってはおられまい。打ち上げたはいいが、菅は最大の“防戦課題”を抱えてしまった形であり、公示を直前にして「選挙と消費税」という二律背反の問題処理が可能かどうか、という力量を問われる形となった。現在のところ菅は消費増税を「公約」と認めながらも「早くても2年か、3年後、もう少しかかるかも」と苦しい発言を繰り返さざるを得ない状況が続く。
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